福西@高校数の世界です。
2月の授業で、T君の「分かった!」という時のメモです。
例題 漸化式A(n+2)+(An+1)-6A(n)=0の一般項A(n)を求めよ。
A(n+2)-αA(n+1)=β{A(n+1)-αA(n)}…(1)
と変換できることを仮定して、これを移項させると、
A(n+2)-(α+β)A(n+1)+αβA(n)=0…(2)
とできます。この式と例題の式との係数比較により
α+β=-1,αβ=-6(これは解と係数の関係より、x^2+x-6=0の解!)
となり、α=2,β=-3(あるいはα=-3,β=2)が求まり、
A(n+2)-2A(n+1)=-3{A(n+1)-2A(n)}
とできたところを、以下B(n):=A(n+1)-2A(n)と定義して、B(n)の漸化式を解くことに帰着されます。
さて、T君はこのことをもちろん憶えていたのですが、(1)の式を
A(n+2)+αA(n+1)=β{A(n+1)+αA(n)}…(1)’
としてみたのでした。(1)の式と何が違うかと言うと、-のところを+にしているわけです。わざわざ最初から-にしておくのは気持ち悪いので、+にしても別に問題はないだろうというわけです。
そうすると、(2)の式は
A(n+2)+(α-β)A(n+1)-αβA(n)=0…(2)’
となりました。さてここまではよかったのですが、出てきた答が合わず、「?」と詰まってしまったのでした。一体どこが問題だったのでしょうか…?
私もどこがおかしいのかに気付かず、二人で30分ぐらい考えていると…
「あ、そうか!」
とT君の方が先に声を上げました。
T君:
(2)’の式だと、α-β=1,αβ=6となり、α^2-α-6=0からすなわちα=3,-2。よって、「α=3,β=-2」としていたのですが、α-β=1だから、βは2ですね。α≠βなんです! そこをうっかりしていました。
私:なるほど。言われてみれば確かに。「数学は嘘をつかない」ですね(笑)。α+β=1の時だと、αとβの間には任意性があってβは特性方程式α^2-α-6=0の解でもありますが、α-βとおいたとき、その任意性が失われてしまったのです。
T君:
ああ、なるほど、だからA(n+2)-αA(n+1)=β{A(n+1)-αA(n)}とわざわざマイナスにして、αとβを取り替えてもいいようにしていたのですね。
私:そうですね。取り替えてもいいのは、α+β,αβが対称式だからです。また、漸化式を解く時は(1)’,(2)’とおいてもいいですが、ただしαを求めてから、α-β=1を解くという手間が一つ増えますね。そこを注意していればそれでも解けます。
T君:
ああ、今実感して分かりました(笑)。