『ぬすまれた夢』を読む(ことば2年、2021/12/8)(その2)

福西です。

(その1)の続きです。

 

歯の妖精は、「最後の竜が石にされるまえから住んでいる」と言われるほど、世界で一番年よりの妖精でした。とても性格が曲がっており、クレムを追い返そうとします。

しかしクレムはあきらめず、夢を返してほしいと訴えます。歯の妖精は、それなら城の中を探すがいいと、七分間だけ時間をくれます。

クレムは水の妖精に助けられ、つかまっている夢を見つけ出します。

「夢をもって帰らないでおくれよ、クレム。おねがい。のこしておいてくれ。なんの音もしない真っ白なこの世界で、きれいなものといったら、それしかないんだよ。」

こう言って、歯の妖精の態度は急にしおらしくなります。そして「百年の寿命をあげる」と申し出ます。しかしクレムは、ノー。「太陽の光より速く走れる乗り物」も、「ポケットに入れて運べるたき火」も、「石でもつらぬける光」も、「なんでもさかさに生えるお庭」も、「いつまでも終わらないことば」も断ります。

仕方なく、歯の妖精は、「わかった。じゃ、真珠をおくれ」と折れます。

そこで、クレムが一つの解決策を思いつきます。

「ぼくの夢を借りたいかい?」

と。この解決は、見事です。

そしてクレムは家の戻ってきます。

クレムは、今回の冒険の間に、知らぬ間に「ものすごいアイテム」を手に入れています。その意外なオチに、なんとも言えない余韻を覚えました。

表題作だけあって、とても読み応えのある短編でした。

 

最後に、「歯の妖精の提案のうちでどれがいい?」と受講生たちに質問しました。「百年の寿命がいいかな」ということでした。