西洋古典を読む(2021/11/7~12/1)(その2)

福西です。

(その1)の続きです。

 

第二に、アッレクトーはトゥルヌスのもとへも向かいます。「立ち上がれ」とたきつけます。トゥルヌスは最初は立派に、理性的に拒否するのですが、しかし女神の怒りを買い、逆らうことはできませんでした。このあたりは女神が理屈ではなく力でねじ伏せた感があります。

7.460-1

彼は武器をよこせと怒号を上げ、寝床から館中に武器を探す。

荒れ狂う剣への愛、戦争を求める罪深き狂気、

結局、トゥルヌスも「イタリアを護れ」とルトゥリー人の軍を率いて、ラティーヌスの王宮を包囲します。

アッレクトーは第三に、アエネーアスの息子アスカニウスのもとへも向かいます。

そしてアスカニウスは、若気の至りで、イタリア人が飼っていた鹿を、狩りの獲物として間違って射殺してしまいます。

7.501-2

(鹿は)血まみれの姿で、命乞いをするかのように、館中を悲しい声で満たした。

鹿の飼い主である娘が、助けを求めます。その声を聞きつけた田園の人々が手近な武器を持って駆けつけます。それがトロイア人と小競り合いを起こし、イタリア側にアルモという若者の死者を出してしまいます。報復が報復を生み、その混乱はあっという間に拡大します。

アスカニウスの行為は、事態の原因ではなく、引き金というものです。もともとイタリアの人々の間に見えない形での不満がたまっており、それがアスカニウスの仕業で目に見える形となったのでしょう。

アエネーアスは、このアスカニウスの責任を取ることになります。それとは正反対の姿として、ラティーヌス王は描かれています。

(その3)へ続きます。