『リンゴ畑のマーティン・ピピン』を読む(西洋の児童文学を読むC、2021/12/9)

福西です。

『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(エリナー・ファージョン、石井桃子訳)、第2話「若ジェラード」を読んでいます。

若ジェラードが十二才になった時のこと。夜に、迷子の羊と一緒に、小さな女の子を見つけます。

若ジェラードは女の子を保護し、暖炉の火にあたらせ、山羊のミルクを与えます。

このとき、女の子は玄関に花の咲かない桜の木を見つけます。

「いつか、大きくなったら、咲くの?」

「ああ、いつか。」

女の子はまた、火のつかないランタンを見つけます。それは老婆がおいていったもので、やはり彼女でも火をつけることはできませんでした。

二人は暖炉の火を見つめ、さまざまな木切れの異なる煙のにおいをかぎます。

「木って、なんで早くなくなるの?」

「それが、いいとこなんだ。」ジェラードはいった。「火は、いつでもおなじじゃないし、ちがった木には、ちがったことをするんだ。」

ここで、印象的な表現に出会ったので、原文でも確認しました。

一瞬、ふたりは、肉体をもたない城の骨と魂を見た、と思うまに、城はくずおれた。

for one moment they saw all the skeleton and soul of the castle without its body, before it fell in.

女の子は、シアと名乗り、父がクーム・アイビの領主であることを伝えるなり、眠りにつきます。

若ジェラードは、眠ったシアを抱きかかえ、領主の館まで送り届けます。

「また、きてくれるかね?」

「いつか。」とシアはいった。

この受け答えは、桜の木のそれと響き合っています。