福西です。
『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(エリナー・ファージョン、石井桃子訳)、第2話「若ジェラード」を読んでいます。
若ジェラードが十二才になった時のこと。夜に、迷子の羊と一緒に、小さな女の子を見つけます。
若ジェラードは女の子を保護し、暖炉の火にあたらせ、山羊のミルクを与えます。
このとき、女の子は玄関に花の咲かない桜の木を見つけます。
「いつか、大きくなったら、咲くの?」
「ああ、いつか。」
女の子はまた、火のつかないランタンを見つけます。それは老婆がおいていったもので、やはり彼女でも火をつけることはできませんでした。
二人は暖炉の火を見つめ、さまざまな木切れの異なる煙のにおいをかぎます。
「木って、なんで早くなくなるの?」
「それが、いいとこなんだ。」ジェラードはいった。「火は、いつでもおなじじゃないし、ちがった木には、ちがったことをするんだ。」
ここで、印象的な表現に出会ったので、原文でも確認しました。
一瞬、ふたりは、肉体をもたない城の骨と魂を見た、と思うまに、城はくずおれた。
for one moment they saw all the skeleton and soul of the castle without its body, before it fell in.
女の子は、シアと名乗り、父がクーム・アイビの領主であることを伝えるなり、眠りにつきます。
若ジェラードは、眠ったシアを抱きかかえ、領主の館まで送り届けます。
「また、きてくれるかね?」
「いつか。」とシアはいった。
この受け答えは、桜の木のそれと響き合っています。