福西です。
『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。
10/29に11「川は海へそそぐ」を、11/5に12「ガチョウたち」を読みました。
ハティはトムに手伝ってもらって、弓矢を作ります。それで庭園の外の牧場に向かって矢を放ちます。
矢を拾いに行くために、ハティしか知らない「秘密の道」を通って、牧場に向かいます。
牧場の外には川が流れており、ハティは、どこまでも旅をつづけられる水をうらやましがります。
ハティに関心があるのは、じぶんの知っているただひとつの川──目のまえを流れている川のことだった。
ふいに、ハティが戻ると言い出します。ハティは牧場に行くことをおばさんから禁じられており、そのことを思い出したからでした。トムは面食らって、ハティのあとを追います。また例の「秘密の道」を通って。しかし、その様子をガチョウたちに見られていることを、そのときは何とも思わなかったのでした。
翌朝、事件が起こります。ガチョウたちが庭園の野菜を食い荒らしていたのでした。ガチョウたちはハティの「秘密の道」を取ってきたのだと、トムは悟ります。
屋敷の主であるハティのおばさんは、ハティを呼びつけ、冷たく言い放ちます。
「おまえがいけないんだ」
と。
ハティの空想が庭園のなかへつれてきた人物たち──聖書のなかの英雄や、妖精や、伝説の人物や、ハティひとりの空想の人物など、ハティの友だちはみんなハティを見すててしまった。
その中にトムも含まれていました。トムはハティから思わず目を背けます。
おばさんは、ハティのことを慈善施設にいた子だといった。亡くなった夫の姪だったから、夫への義務としてうちへひきとってやったが、とんでもない恩知らずだといった。血のつながりがあるというだけで、あわれみをかけてやったのが、まちがいのもとだった、ともいった。(…)
「おお!」と、トムは気がちがいそうになってつぶやいた。「なぜ、ハティのおとうさんやおかあさんは、ハティをひきとりにこないんだろう?」
次にトムが庭園を訪れた時、トムは喪服姿の小さな少女に出会います。それが父母はをなくしたばかりの頃のハティだと気づきます。
それ以来、トムはハティの空想を、仮にまた王女だと言っても、まぜっかえすことはしなくなったのでした。