西洋古典を読む(2021/10/6)

福西です。

『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)6.886-892を読みました。

英訳の『The Aeneid』(Robert Fagles訳、Penguin Classics)の該当箇所は、1022-1029です。

印象に残った個所です。

その心に将来の名声への愛の火を点し終えると、(岡・高橋訳)

has fired his soul with a love of glory still to come,(Fagles訳)

incenditque animum famae venientis amore,(原文)

精神に(animum)火をつけ終えた(incendit)というフレーズが心に残りました。

 

読んだ後、名誉欲が西洋と東洋とではだいぶ違うということが話に出ました。

以下はA君が教えてくれたことです。

・東洋では、忠臣蔵のように、侮辱した相手にやり返せなかった主君のために、臣下は仇討ちを企てる。

・しかし、西洋では、そんな主君にこそ臣下は愛想をつかす。

・なぜ中世の西洋であんなに勝ち目のない戦争が多発するのか。それは、「侮辱されて、報復しないことが不名誉とされたから」

・戦争に負けても、西洋には「保釈金」という制度がある。

まとめると、

・名誉を棄損されて、戦争をしないことが不名誉

・戦争で負けることは不名誉ではない

・負けても捕虜となればいい

・捕まっても殺されることは少ない(一人を殺すメリットよりも、その多くの親戚とあとで戦うデメリットの方が大きい)

・保釈金制度がある

ということだそうです。

百年戦争がなぜあんなに長引いたのか。一つの原因は、「捕まえては保釈すること」を繰り返していたからですと、A君が教えてくれました。