『トムは真夜中の庭で』を読む(西洋の児童文学を読むB、2021/9/25)

福西です。

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。

「6 ドアを通りぬける」を読みました。

このごろ、トムは毎晩のように階下から庭園へぬけだしていくようになった。

と冒頭にあるので、読者の知らない間に、トムは何度も庭園に行っていることがわかります。

トムは、庭園に行くたびに、季節が変化していることに驚きます。つまり、時間の流れがはやいのです。

しかし一度だけ、いつもとは違うケースがありました。

いつもなら、ドアを通りぬけると、

「夜中の12時~13時」→「夜明け前~日中の庭園」

に着きます。

ところがその時の庭園は、夜中でした。

トムは「夜→夜」で、周囲の暗さが変わらないことに違和感を覚えます。

しかも嵐の夜でした。

庭園のモミの木が大きく揺れています。

すると、雷鳴がして、モミの木に雷が落ちたのでした。モミは火を噴いて倒れます。

トムは、目の前で生じた出来事に驚きます。

そして、「おお!」という悲鳴を聞きます。

その悲鳴は、いったいだれのものなのでしょうか?──それがこの作品の中心部分に触れる謎です。

 

しかし、トムが驚くことは、まだありました。

次にトムが庭園に行ってみると……

モミの木が、元通り、立っているではありませんか!

 

トムは、庭園の時間が、はやいだけでなく、逆行することもあるのだと知ったのでした。