福西です。
『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。
「6 ドアを通りぬける」を読みました。
このごろ、トムは毎晩のように階下から庭園へぬけだしていくようになった。
と冒頭にあるので、読者の知らない間に、トムは何度も庭園に行っていることがわかります。
トムは、庭園に行くたびに、季節が変化していることに驚きます。つまり、時間の流れがはやいのです。
しかし一度だけ、いつもとは違うケースがありました。
いつもなら、ドアを通りぬけると、
「夜中の12時~13時」→「夜明け前~日中の庭園」
に着きます。
ところがその時の庭園は、夜中でした。
トムは「夜→夜」で、周囲の暗さが変わらないことに違和感を覚えます。
しかも嵐の夜でした。
庭園のモミの木が大きく揺れています。
すると、雷鳴がして、モミの木に雷が落ちたのでした。モミは火を噴いて倒れます。
トムは、目の前で生じた出来事に驚きます。
そして、「おお!」という悲鳴を聞きます。
その悲鳴は、いったいだれのものなのでしょうか?──それがこの作品の中心部分に触れる謎です。
しかし、トムが驚くことは、まだありました。
次にトムが庭園に行ってみると……
モミの木が、元通り、立っているではありませんか!
トムは、庭園の時間が、はやいだけでなく、逆行することもあるのだと知ったのでした。