福西です。
俳句では、だいたいですが、8月が初秋、9月が仲秋、10月が晩秋です。
今が、秋のはじめではなくて、真ん中(来月はもう晩秋)だと言われると、ちょっと驚きます。
秋学期は、たとえばつぎのような秋の句を扱う予定です。
たましひのたとえば秋のほたるかな 飯田蛇笏
しづかなる力満ちゆきばつたとぶ 加藤楸邨
こほろぎのこの一徹の貌を見よ 山口青邨
秋来ぬとサファイア色の小鯵買ふ 杉田久女
一句目は、「た」ましいの「た」とえばあきのほ「た」るかな、と、調べがよいことにまず気づきます。
何度か口ずさんで音を楽しんでいると、途中でふと気づくことがあります。
「秋の蛍?」と。
それは初秋の季語として、歳時記にちゃんと載っています。
でも、実際に、秋のあいだに蛍を見ることは、現代の日本ではまずないでしょう。
つまり、多くの人にとって、この句は「見えないもの」を心の目で見ようとする、そんな詩だと思います。
見えないものを歌った和歌では、次のものが有名です。
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(古今和歌集169、藤原敏行)
それにならって、蛇笏の句も、
「風」→「蛍」、
「秋」→「たましひ」
として、「見えないもの」を表現しているように感じます。
このように、少しずつ紹介していきます。