『クローディアの秘密』を読む(西洋の児童文学を読むC)2021/7/22(その2)

福西です。

(その1)の続きです。

 

しかし、そこで「終わり」としないのが、作者カニグズバーグです。

もうひとひねりを作品に加えます。

二人の「秘密」を、運転手が聞くともなく聞いていたのです。

(客席と運転席とは防音ガラスで仕切られているのですが、ジェイミーの「ある癖」のせいで、筒抜けになっていたのです)

もちろん、運転手を通じて、夫人にもその話の内容が伝わります。

(10章は、ほぼその運転手のセリフで占められます)

 

そして、夫人は「彼らの秘密を知らないふりをしていること」を、新しい『秘密』に付け加えます。

こうして、二人よりも「一枚上手」であることを示したのでした。

トランプではジェイミーに兜を脱いだ夫人ですが、ここでは夫人の勝ち、というわけです。

 

実は、夫人にはもう一つ秘密があります(最後に読者もそれを知ります)。

それなので、夫人は「二枚上手」なのですが、ここでは割愛します。

 

最後の数行は、いかにもカニグズバーグらしく、あっさりとして、小気味よいです。

下記の伏線が回収されます。

・洗濯物を詰め込んだ「楽器ケース」のゆくえ

・一度も使う機会のなかった「トランジスターラジオ」のゆくえ

緊密なプロット。無駄のない伏線。

『クローディアの秘密』は、その結末を知っても、読み返すとまた面白さが増す、終わりのない作品です。

表紙の二人は、これからも読者とともに、何度も美術館に入っていくでしょう。

あらためてYさん、読了おめでとうございます。

(読み終わって、さらになつかしくなります)