西洋古典を読む(2021/7/14)

福西です。

『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)6.824-835を読みました。

英訳『The Aeneid』(Robert Fagles訳、Penguin Classics)の該当箇所は949-961です。

ローマ人の英雄のカタログの最中です。カエサルとポンペイウスの霊が出てきます。

印象深かった箇所は以下の通りです。

「頑健な力を濫用して祖国のはらわたを抉るな。

そなたがまず先に寛容を示せ、オリュンプスからの血筋を引く身なのだから」(岡・高橋訳)

英訳の方は以下の通りです。

never turn your sturdy power

against your country’s heart. You, Caesar, you

be first in mercy ─ you trace your line from Olympus ─(Fagles訳)

次々回で読む852行目「従う者には寛容を示して、傲慢な者とは最後まで戦い抜くこと」と呼応します。

このようにアンキーセスは地上に出る前の英雄たちに語ります。その彼の口を通して、(内乱とそれ以後を生きた)作者の声が聞こえてきそうです。

そして『アエネーイス』のラストシーンを、アエネーアスがトゥルヌスの降参を許さずにとどめを刺すシーンを、いやがおうでも読者に思い出させます。