西洋古典を読む(2021/7/21)

福西です。

『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)6.836-846を読みました。

英訳の『The Aeneid』(Robert Fagles訳、Penguin Classics)の該当箇所は、962-975です。

ローマ人の英雄のカタログの最中です。ファビウス・マクシムス・クンクタートルが出てきました。

クンクタートルは、あだ名で、「ぐず」という意味です。ハンニバルに対して遅延戦術をとり、ローマを最終的な勝利に導いた英雄の一人です。

印象深かった箇所は以下の通りです。

「ファビウス家の人々よ、そなたらの列はどこまであるのだ。ついて行けぬ。」(岡・高橋訳)

英訳の方は以下の通りです。

You Fabii, where do you rush me, all but spent? ─(Fagles訳)

生を享ける予定の霊たちは、明るい地上へ向かって、暗い地下で並んでいます。それをアンキーセスがアエネーアスに「彼はな……」と順番に説明しています。ところが行列全体に占めるファビウス一門の割合が大きいので、アンキーセスは「費やす」「疲れさせる」(原文ではfessum)と言っています。

短い表現だからこそ、行列の長さを読者に強くイメージさせる箇所だと思います。

 

6巻の冒頭、冥府行きの前に置かれた「ダイダロスの扉絵」(6.30-33)でもそうでしたが、「細部までつぶさに見ようとするとシビュッラが急かす」という様式から、6巻では「省略」がちょくちょく使われています。その反対に、1巻のユーノーの神殿の絵では、心ゆくまで細部が描かれていました。そのような技法上のコントラストが1巻と6巻でうかがえます。

 

次回9/1は、847-859を読みます。英訳の該当箇所は976-992です。

6巻のサビの一つである、「お前がマルケッルスとなるだろう」や「双子の門」の箇所が近づいてきました。

6巻はあと3回ぐらいで読み終える予定です。