福西です。
クマのプーさんえほん(ミルン、石井桃子訳、岩波書店)の、『14 コブタのおてがら』を読みました。
風の強い日に、プーとコブタはフクロに会いに行きます。お茶をごちそうになるためです。
しかし、おじゃましたとたん、フクロの小屋がサイコロみたいに風に倒されてしまいます。
救助を呼ぼうにも、玄関が天井にあるために、外に出られません。
出口は、郵便受け箱のスリットだけ。フクロは飛べますが、体が大きくてスリットを通れません。
そこでプーの発案で、「郵便受け箱に、滑車のようにロープを引っかけ、コブタを玄関まで吊り上げる」と決まります。
このとき、コブタが心の中で「むりむりむり!」と言っているのが聞こえてきそうで、思わず笑えます。
フクロがコブタを乗せて飛べばいいじゃないかと思いますよね。
しかし、フクロはそんな重労働はしません。
「背部筋肉が……」云々と、一同をケムに巻く始末。
コブタは根っからの怖がりなので、
「もし切れたら?」
と本気でききます。
これに対するフクロの返事が、まるで他人事です。
「そのときは、またべつのひもでやりましょう。」
と。読者は笑いますが、コブタの脳裏では、上がっては落ちる自分が何度もイメージされます。次いで、これまでの「楽しかった日々」が走馬灯のように流れます。
ところで、このコブタとフクロのやり取りには、伏線があります。
フクロの家に行く途中、風で大きく揺れている木のそばを通るシーンです。
「もしぼくたちが下にいるとき、木がたおれたら?」
すると、プーは念をいれてかんがえたあげく、
「もしたおれなかったら?」
コブタは、この返事でやっと安心し(…)
とあります。要するに、コブタは、
「もし切れたら?」に対して、
「もし切れなかったら?」
と言ってほしかったのでしょう。
その「ズレ」が、今回一番の味わいどころでした。