福西です。
『はらぺこオオカミがんばる』(ストー、掛川恭子訳、岩波書店)を読んでいます。
第3章は、「サンタクロース」でした。
サンタクロースのアルバイトをしないかと、オオカミがデパートの人から勧誘されます。オオカミはいやいやながら、おもちゃ屋で子供たちからクリスマスにほしいものを聞き出します。そこへポリー一家がやってくる、というお話です。
読んでいて一番面白かったのは、むしろ前ふりの部分でした。
オオカミがサンタクロースのつけひげをして、ポリーに電話をかけてきます。
けれども電話なので、せっかくの変装もポリーには見えません。
電話の仕組みがいまいち分かっていないオオカミはゴソゴソはじめます。電話の向こうから、ポリーがたずねます。
「なにをしているの?」
「いや、なに、ちょっと、電話機の中を、のぞいてみてたんだ。ちょうど手もとに、小さな望遠鏡があったんで、それでのぞいてみたけど、ほんとだね、なんにも見えないよ。とにかく、まっくらなだけだ。そのまま、まっててくれよ、ポリー。ろうそくをとってくるから。」
ポリーは、受話器を耳にあてたままにしておきました。やがて、シュー、パツッと、マッチをする音がしました。(…)
「ここじゃないな……あっちのはじを見てみるか……これを、はずしてみたらどうだ……この電話線を、よく見てみるか……」
ものすごい音をたてて、なにかが爆発しました。
ツー、ツー、ツー。電話が切れました。しばらくたったある日、ポリーは、包帯を巻いたオオカミとすれ違います。
「どう、いたむ? すごく大きな爆発だったんでしょ?」
「爆発? どこで?」
オオカミはあっちこっち、きょろきょろ見まわしました。
「ここでじゃないわ。あなたのところよ。ほら、このあいだ、あたしに電話をしてきたとき。」
「ああ、あれか。」
オオカミは、なんでもないという調子でいいました。
「あれはね、爆発なんかじゃないよ。火花がちょっと、パチパチってとんで、そのあと、バン! それだけ。ろうそくを、電話線にちかづけすぎたものだから、とけてくっついたかなんかしたんだ。びっくりするようなことじゃないさ。心配かけたね、ポリー。」
それで、包帯の実際の理由をたずねる、という展開です。
毎度のことながら、落語みたいで、音読が楽しくなります。