山下です。
ラテン語のHomo sum.は名言名句として知られます。
訳すと「私は人間である」となります。
「人間に関わることで自分に無縁なものは何もないと思う」と続きます。
ローマの喜劇作家テレンティウス『自虐者』77に見られる表現です。ヨーロッパの歴史において、じつに多くの人たちがこの表現を座右の銘だと公言してきました。 「ホモー・スム」とだけ口にすれば欧米のラテン語を知っている人には通じます。
Homo sum.をラテン語の例文としてとらえるとき、一見簡単に見えますが、文法的には思いのほか落とし穴があります。
文頭のHomoは主語ではないということです。ラテン語は補語も文頭にきます。また、主語にあたる人称代名詞は省略されています。
Homo sum.が簡単だと思う人はTu fui ego eris.も簡単なはずです。
「私はあなただった。あなたは私になるだろう」という意味になります(「墓碑銘の言葉」)。
Tuは「あなた」ですが、主語でなく補語です。egoは「私」ですがこれも主語でなく補語です。
現代語の語順の感覚をいったん忘れる必要があります。
その点、英語などの現代語に慣れた人は、その得意な知識が落とし穴になることがあります。