山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。
『つくる』1〜2年
担当 山中 壱朗
本年度はコロナウイルスの影響で6月からとなったものの、幸いなことに体調不良による欠席もなく開講しております。
春学期開講前に、工作するときの環境について考えていました。工作自体は山の学校に限らず学校やご家庭でもできる取り組みです。学校では、図画工作の授業や休み時間に同級生の子と話し合いながら取り組むことができます。また、ネットや小売店を通して丁寧な説明書がついたキットを容易に入手できるようになり、それぞれのご家庭で時間を気にせずに取り組むこともできます。
昨年度の山びこ通信では、『つくる』について「他の受講生の作品が出来上がるまでの過程を見ることができるため、受講生自身が思いつかなかったような工夫に触れることができる貴重な機会」と書きました。これは、同じ部屋で作業をするものの、取り組む内容が異なるからこそ生み出される空間であり、受講生が互いに影響を及ぼしあうことで(講師はそれを促す、俯瞰して見つめるようにすることで)初めてできるものだと考えております。『つくる』では、受講生にとって(講師にとっても)予測できないことが日々発生し、家庭や学校での工作の取り組みにはない不思議な空間を形成しているように思えます。授業が始まる前に「今日はこれを作ろう」と考えていても、授業中に別のアイデアがわいたときにはそれに取り組み、17時20分ごろには当初の計画とは別のものができることもよくあります。それは、他の受講生の影響や山の学校に来て初めて見たものの影響によると思われますが、実際に行動することができるのは、好奇心だけでなく、内容は違っても同年代の子がどのような結果になるかわからない課題に取り組んでいることに心強さを感じているのかもしれません。
今年度は、モーターを用いた工作でうまく動かないことに対して、配線や歯車、電池を確認したり、ダンゴムシのための迷路を作る際には道幅や壁を乗り越えないかについて話したり、お菓子の空き箱や新聞紙でできた作品を中心に広がるストーリーを共有したり、私自身も様々な世界を窺うことができました。
受講生の皆さんには、山びこ通信で掲載する写真とは別に、各学期末に授業風景の写真をお渡ししております。これは、山びこ通信が年1度の発行になってから始めたことですが、受講生自身が作品を仕上げるために道を拓く様子、完成した際の様子を選んだつもりです。写真を見返したときに製作過程のこと、完成した作品で遊んだ時のことを思い出したり、家族の皆さんと話したりしていただけたら幸いです。