山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。
「『数学ガールの秘密ノート』を読む」
担当 福西亮馬
2019年10月から『数学ガールの秘密ノート』(結城浩、SB Creative)を読んできました。現在出版されているもののうち、中学生が内容を容易に追えるものとして、『整数で遊ぼう』『式とグラフ』『場合の数』『微分を追いかけて』『学ぶための対話』の5冊を選びました。受講生に音読してもらい、そのつど解説をはさみながら、読了しました。
『式とグラフ』では、計算の世界(方程式)と幾何の世界(グラフ)の往来が強調されていました。計算は正確な結論に至るために必要不可欠です。一方、計算結果にどうしても納得がいかないときは、どのようにアプローチしたらいいのでしょうか。そこで幾何の出番です。
たとえば「2次方程式x2-1=0の解を求めよ」という問題を考えます。x2-1=0の「=」はいつでも成り立つわけではなく、「そのようなときがある」という意味です。そしてそのときのxの値を求めよ、というのです。答は計算でx=1とx=-1と出せます。x2-1にx=1やx=-1を入れると0となるので、これが解です。けれども、「ちょっと待てよ」と立ち止まります。答をいったんグラフで見直そう、と。すると、どうでしょうか。
まず、x2-1=0を、y=x2-1とy=0の「組み合せ」だと解釈します。(yで両式をつなぐと、x2-1=0になります)。y=0は、またの名を「x軸」といいます。そして、グラフで見直すと、y=x2-1とy=0は、2点(x,y)=(-1,0)と(1,0)で交わります。
つまり、x2-1=0の解を計算することとは、「y= x2-1とy=0(x軸)との交点(のx座標)を求めること」だったのです。これが計算に付随する「かたち(意味)」です。
『微分を追いかけて』では、微分について学びました。微分とは何でしょうか? これも幾何学的には、グラフの接線のことです。いまはその理解で十分です。学校で本格的に学ぶときの足がかりにしてください。