山下です。
ラテン語にNunc omnia rident.(今すべてが笑っている)という詩句があります。
ウェルギリウスの「牧歌」に出てくる言葉です。
日本語に「山笑う」という春の季語があります。
どこか似ているなと思ったのですが、ウェルギリウスの詩の舞台は秋です。
ただし、目に見える自然界のすべてが笑っているように見えるという点で、日本語の「山笑う」と通じる部分がある、とは言えます。
今「日本語の」と書きましたが、次の説明によれば、漢文の影響を受けた表現のようです。
「草木が芽吹き、花が咲き鳥のさえずる春の山を擬人化して「山笑ふ」といった。中国北宋の画家郭煕の「郭煕画譜」による季語である。夏の山の「山滴る」、秋の山の「山装ふ」、冬の山「山眠る」に対応する季語である」とのこと。>>山笑ふ(やまわらう、やまわらふ)
その漢文の書き下し文は次の通りです。
春山淡冶にして笑ふが如く、夏山蒼翠とし滴るるが如く、
秋山明浄にして粧ふが如く、冬山惨淡として眠るが如し
中国北宋の画家郭煕 『郭煕画譜』
漢文は書き下し文で読んでも美しいと感じます。また、その影響下にある日本語表現も心にすっと入る魅力をたたえています。
それぞれの言語に、それぞれの言語の美しさ、快い音の響きがあると思います。
山の学校の語学のクラスが増えました。
英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、現代ギリシャ語、漢文、韓国語、ラテン語、古典ギリシャ語。
それぞれの先生とお話ししていると、その言語を深く愛され、とくに音の美しさを大切にされていることがうかがえます。大事なことだと思います。
私は日頃幼稚園児に俳句の素読をやっています。意味は教えず、芭蕉や蕪村、一茶の俳句をひたすら声に出します。
日本語の「音」と「リズム」を大事にすることにつながればよいと願っています。