「かの国の人文知の裾野の広さ」フランス語講読、過去記事より(2021/03/11)

事務担当、梁川です。

過去の記事を読み返していて、改めて強く印象に残りましたので、ご紹介致します。
(私自身が「かいが」クラスを担当していることもあり、「絵画」に関する本を扱っておりましたので)

以前、フランス語講読のクラスを担当して下さっていた武田宙也先生の記事です。>>「フランス語講読」(クラスだより2012.3)

以下全文を転載致します。

 『フランス語講読』 (担当:武田宙也)

「フランス語講読」では引き続き、美術史家のダニエル・アラス[Daniel Arasse]による絵画入門書、『絵画のはなし[Histoires de peintures]』を読んでいます。この本は、アラスが 2003 年にフランスのラジオ番組に出演した際の講話を文書化したもので、基本的には一般の美術愛好家を対象としています。とはいえ、内容的には必ずしも初心者向けということはなく、それどころか、ときにかなり専門的な議論も差し挟まれます。

たとえば、17 世紀スペインの画家ディエゴ・ベラスケスの代表作《女官たち》を取り上げた章は、20 世紀フランスの哲学者ミシェル・フーコーの『言葉と物』という著作に触れるところから始まります。というのも、そこには《女官たち》の有名な分析が含まれているからです。私が驚いたのは、アラスがこの本に言及する際に、「みなさんご存知」であるという前提のもとに、フーコーの議論の概要をかなり大胆に端折っていた点です。たしかにこの『言葉と物』は、1966 年の出版当時、哲学書としては異例のベストセラーとなった本です。しかしながら、そこで展開されている《女官たち》の分析は、実際にはかなり込み入ったもので、またその理解にはある程度の専門的な知識を要するものです。

一般向けのラジオ番組で、この種の哲学書の内容を周知のものと想定して話を進められるということ。いささか大げさに言うならば、私はここに、かの国の人文知の裾野の広さを思い知った気がしました。

(武田宙也)

(以上、転載終了)

現在「フランス語講読」を担当されている渡辺洋平先生も哲学書(アンリ・ベルクソン)を扱っております。「4月からは、ジャンル、難易度問わず、原文で読みたいものがあればご相談下さい!」ということです。フランス語の先生は、もう一方、フランス思想史専門の谷田利文先生がいらっしゃり、同様に対応が可能です。

何か読んでみたいものがある方は、お気軽にお問い合わせ下さい。