山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。
『高校英語』『高校数学』 A,B 『英語講読』C 『調査研究』
担当 浅野直樹
今年は英語クラスと数学クラス、そして調査研究クラスを担当しました。そこで、英語と数学が、どのように調査研究につながるかを書きたいと思います。
調査研究クラスでは、Twitterにおいて政治的なトレンドを構成するツイートをするアカウントは、自分のオリジナルのツイートよりもリツイートが多いのではないかという仮説を立てました。また、そのようなアカウントのアイコン画像は、デフォルト画像が多くオタク的な画像は少ないのではないかという仮説も立てました。
これらの仮説を検証するために、Twitter社が提供しているStandard search APIを用いて、使用言語に日本語を設定し、特定のワードが含まれる直近の1000ツイートを取得しました。特定のワードとして、「#都知事選」と「安倍辞めた」を採用し、東京都知事選が行われる一週間前の6月28日、選挙当日の7月5日、その一週間後である7月12日、安倍晋三総理大臣が辞任の意向を表明した8月28日、その翌日である8月29日、一週間後である9月4日にデータを取得しました。6月28日及び8月28日には、比較対照のため、特定のワードとしてワイルドカード(*)を指定した実質的にすべてのツイートからのデータも取得しました。次に、同社が提供しているGET statuses/user_timelineを用いて、そのツイートをしたユーザーの直近100ツイートをそれぞれ取得し、その100ツイートに占めるリツイートの割合を計算しました。
このような仮説検証を行うためには、Twitter社が提供しているサービスの仕様や使い方を読み解く必要があります。それらは基本的に英語で提供されています。Twitter社のサービスだけでなく、プログラミング言語も、公式ドキュメントは基本的に英語です。もっと言うなら、プログラミング言語自体に内蔵されている関数なども英語で表現されています。英語がわかれば関数の名前からおよそどのような動作をするのか想像できます。
これらのツールを用いてどのようなことをするかということには数学的な思考が関わってきます。ある仮説を検証したい場合は、うまく対照できるように検証を設計しなければなりませんし、結果の解釈にも数学的な論理性が求められます。例えば、安倍晋三総理大臣が辞任の意向を表明した8月28日に、予想に反してリツイートよりもオリジナルツイートが多かったことは、論理的に考えて、突発的なニュースの当初はリツイートできる元ツイートが存在しないからだと解釈しました。
また、上記の仮説を思いつく前には、先行研究を読み込んでいます。そこでも英語と数学が求められます。今回は翻訳書に頼りましたが、原文は英語で書かれているキャス・サンスティーンの研究に触発されました。翻訳書でも、「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」といったキーワードは、英語をカタカナ表記にしたままにされており、英語の持つ意味合いを理解できたほうがよいです。アイコン画像の分類は、冨永登夢、土方嘉徳、西田正吾「アイコン画像に注目した Twitter 研究の提案」という論文を参考にしています。その論文では、アイコン画像の分類が複数人でほぼ一致することが数学的に確かめられたとされていました。
英語と数学はこのように使うこともできるという一例でした。