山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。
『現代ギリシャ語』
担当 福田耕祐
この一年はギリシャや日本を含めた全世界がコロナ禍で大きな苦しみを被った年でした。講師の福田は今年もギリシア・テッサロニキからSkypeで授業させていただきました。授業を通して今年は名詞と形容詞の曲用を学び、さらに一般動詞の活用を学びました。一歩一歩着実に文法のテキストを前に進めています。
個人的な話ですが、講師の福田は現在テッサロニキで京都大学に提出する、ニコス・カザンザキスという日本にも訪問し、日本に関する旅行記も書いた作家の作品と思想に関する博士論文を執筆しています。この関係で、ギリシャに来たのにも関わらず、日本の能や石庭、また絵画等の文化に関する研究や武士道と日本の死生観等を改めて勉強し、且つ自分の携わっていることを報告するためにカザンザキスというフィルターを通して日本をギリシャ語で表現する機会に恵まれました。ギリシャ人に日本のことを知ってもらう機会を持てたのは嬉しかったですが、外国人に説明するために自分の中で日本を突き放した視点で見て、日本語で日本を説明する際には普通に用いる言葉が使えない状況で何とか言葉を尽くして説明せねばならないことには四苦八苦しました。また、カザンザキスは日本について「日本ほど古代ギリシャを思い起こさせる国はない」と語るように、日本と古代ギリシャ文化の類似点を『日本旅行記』の中で指摘しており、ギリシャとの比較の中で描かれた日本を見るという機会にも恵まれました。
いよいよ帰国の日も少しずつ近づいてはいるのですが、ギリシャ文学を更に学びに来たのに、コロナ禍によって古今のギリシャ古典と共にテッサロニキの自室に閉じ込められることで逆に日本について外の視点に立たされた上で深く見つめることになり、本当に人生何がどうなるかわからないなぁと嘆息させられた一年でした。皆さまにも、現代ギリシア文学の古典作家であるカザンザキスの作品と彼の描いた日本像をお届けできる日が来るように尽力していきたいと思います。