『ロシア語講読』クラス便り(2021年3月)

山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。

『ロシア語講読』

担当 山下大吾

 当クラスでは引き続き、受講生Tさんお一方と共にロシア文学の作品を読み続けています。春学期は新型コロナその他の影響で休講となりましたが、秋学期からオンライン式で再開となり、旧臘にはこの数年底本として用いていたGleb Struve編集のロシア語読本所収の作品を全て読み終えるという節目を迎えました。読本の年代的配置に従って、ソログープ『囚われの身』、ブーニン『日射病』、ザミャーチン『洞窟』、バーベリ『ドルグショーフの死』、ゾーシチェンコ『クリスマスにまつわる話』と20世紀の短篇を読み進めてきましたが、ソログープの子供ならではの純真な思いから繰り広げられる悲喜劇と、ザミャーチンの革命直後の混乱した現実と奇妙な幻想とが、独特の映像的手法を織り込みつつ一体となった世界、月もなく影に満たされた、希望の見えない洞窟の描写が特に印象に残っています。

 この1月からは、6年前に始まったチェーホフの短篇から散文作品の講読が続いてきたので、改めて詩を読みたいとのTさんのご要望もあり、Julia Titus編集のロシア詩読本を基にして詩の講読に取り組んでいます。読本は19世紀のプーシキンに始まり20世紀のエセーニンで終わるという構成になっていますが、以前プーシキンやレールモントフを始めとした19世紀の代表的な詩作品を読んだ経験もあることから、今回は時代を遡る形でエセーニン、マヤコフスキイからプーシキンへという順番で読むことに致しました。少々型破りな脚韻やリズムなど、古典的な詩形では見られない形式や内容を楽しみつつ、詩行の背後に込められた真意を巡って、Tさんと一篇ごとに意見を交換し合いながら講読を続けています。