山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。
『0から1へのフランス語入門』『初級フランス語(文法)A・B』
担当 谷田利文
担当しているフランス語の講座では、少人数制をいかして、受講される方の要望に沿った内容にすることを心掛けています。
「0から1へのフランス語入門」では、問題を多く解いて記憶の定着を図りたいという要望から、問題数の多いテキストを選びました。講座の始めには、動詞の活用を確認し、つまずきの原因ともなりうる動詞の活用に少しずつ慣れていってもらえればと思っています。クラスでは、demiという単語が出てくれば、デミタスコーヒーの由来(demi 半分、 tasse杯)について話すなど、時に脱線をしながら、気軽に質問などができるような雰囲気作りを心がけています。このクラスは、全くのゼロからフランス語を学ぶものですので、興味がある方は、どなたでも参加していただければと思います。
「初級フランス語(文法)A」では、短期間でしたが、社会人を経て大学院に入り修士論文を準備されている方が受講され、論文で扱う19世紀末の書簡集を一緒に読み、研究のサポートを行いました。このような特殊な要望に応えられる点が、少人数制の利点だと思いますので、気軽に相談していただければと思います。
その後、コロナで休止されていた方が復帰され、文法の学習を一通り終え、現在は、文法の復習と、要望のあった、モーリス・ブランショの『文学空間』の講読を並行して進めています。クラスでは、まずブランショの複雑な文章を、()や[]の記号を使い、S(主語)やV(動詞)、O(目的語)など、核となる文章の構造を示し解説します。その後は、内容の解釈に入りますが、ここでは受講されている方と自由に意見を交わし、ブランショの思想を解釈することを楽しんでいます。
「初級フランス語(文法)B」では、要望のあった読解のためのテキストから、ラ・ロシュフコー、ル・クレジオ、アゴタ・クリストフ等の文章を選び一緒に読み、現在はコレットの『牝猫』の講読を行なっています。上流階級の生まれであるアランと、奔放なその恋人カミーユ、この若い二人のカップルに、アランの飼い猫サアを加えた二人+一匹が主要な登場人物になっています。カミーユの美しさには惹かれながら、性格や行動には育ちの違いを感じてしまうアラン、そして、サアの鳴き声に対し(それはまさに猫撫で声なのですが)、「盛りがついてるのよ」と嫉妬心を覚えるカミーユ。このような三者の関係や、コレットの繊細な情景描写が非常に興味深く、楽しみながら読解を進めています。
どのクラスにも言えることは、受講される方の知的な好奇心や向上心の高さです。しかも、それぞれが学ぶ喜びや、詩や小説などの創造的な仕事に生かすために、フランス語を学ばれています。講読のクラスでは、受講されている方がフランス語で読みたいという本を選んでいるため、フランス語を教えるという一方通行ではなく、その文章を解釈する、味わうという点では、刺激を受けることも多く、充実した時間となっています。