山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。
『ギリシャ語初級文法/初級講読A』
担当 山下 大吾
丁度去年の同時期に、岩波書店刊田中美知太郎・松平千秋著『ギリシア語入門 新装版』を教科書として開講し、通常参加とオンライン式の方々合わせて秋学期に5名という受講生を迎えた初級文法クラスは、先日無事所定の70課の課程を修了することが出来ました。ギリシャ語という、特に動詞に多様な活用を有し、統辞構造も極めて豊かな内容を持つ言語の学習を一通り達成された受講生の皆様の熱意に心からの拍手を贈りたく存じます。今学期の残りは、教科書の最後に取り上げられているプラトーンの『クリトーン』を読める所まで読むという講読形式の授業になっております。
講読クラスでは、Cuさんお一方と共にホメーロスの叙事詩に取り組んでいます。昨年秋学期までに『イーリアス』の1歌を読み終え、現在は『オデュッセイア』1歌を講読中です。ヘクサメトロスの韻律に注意し、一語一語の文法形式を確認しながらの講読で、一回の授業で10数行から20行弱というペースで進んでおります。Cuさんはホメーロスのみならずウェルギリウスにも関心を抱かれ、ある日『アエネーイス』の訳本で僅かに触れられている神話伝承の出自が何処に当たるのか不思議に思われ私に尋ねられましたが、調べた結果『イーリアス』の古註(スコリア)に遡るものであることが分かり、ギリシャ・ローマ古典世界の一体性に改めて目を開かれた様です。後日問題となった箇所のスコリアのコピーをお渡しし、その探求心に敬服しつつ責を塞ぐこととなりました。