ことば1年(2020/11/25)

福西です。

以前、『リトル・グレイラビット』(アトリー、 箕浦万里子訳、偕成社)シリーズ(全8冊)を読了しました。

     

引き続き、アトリーの作品を読んでいます。

この日は、『くつなおしの店』(アトリー、松野正子訳、福音館書店)を半分まで読みました。

靴職人のニコラスじいさんは、孫のジャックと二人暮らし。腕は確かですが、工場製品に押されて、貧しい暮らしをしています。

足の悪いポリー・アンのために、やわらかい靴を作ってほしいとジャックから頼まれ、ニコラスじいさんは迷ったあげく、市場で赤いモロッコ革のはぎれを手に入れてきます。靴ができあがると、革がちょっぴりあまりました。「人形の靴が作れる」とポリー・アンが無邪気に提案します。けれども客が来なくて余裕のないニコラスじいさんは、「そんなものを作るほどおちぶれちゃいない」と不機嫌になります。

満月の夜。月光にさらされて火のように光るモロッコ革を見るうちに、ニコラスじいさんは心を入れ替え、ミニチュアの靴作りに取りかかります。その時、頭の中で音楽が鳴るかのように、創作の喜びがニコラスじいさんを満たします。

完成した小さな靴は店の窓に吊るされ、ジャックが「妖精の靴にぴったり」と書いたカードをつけます。するとその夜、不思議な客が幸運とともにやって来るのでした。

アトリーならではの、ファンタジーと現実の接点を味わえる一作です。抑制のきいた文体が魅力です。行間ににじむニコラスじいさんの内面の声、心の機微を味わいながら、ゆっくりゆっくりと読みました。

次回は続きから読みます。