西洋の児童文学を読むB(中学生)2020/10/30

福西です。

『はてしない物語』(エンデ、上田真而子ら訳、岩波書店)を読了しました。受講生のみなさま、おめでとうございます。

受講生のKai君とAoniさんは、この日に合わせて、これまでに書いた各章の要約をもとに、「全体の要約」を新たに書きおこしてくれました。また、Kagaya君は、これまでに書いた各章の要約を清書して、一覧を作成してくれました。

『はてしない物語』全体の要約

S. Kai

いじめられっ子のバスチアン・バルタザール・ブックスは、コレアンダー氏の本屋であかがね色の本を盗む。学校の屋根裏に逃げ込んだ本好きの少年は、『はてしない物語』を読み始めた。

本の中の国ファンタージエンは、虚無という謎の現象により侵食され危機におちいっていた。この原因は、ファンタージエンと一心同体の女王幼ごころの君が、新しい名がもらえないと治らない深刻な病気でふせっていることだった。幼ごころの君のお告げにより、女王の命を救う方法を見つけるための冒険にアトレーユが臨むこととなり、女王の代理の証しであるアウリンを持って旅に出る。

アトレーユは、太古の媼モーラに、「幼ごころの君は、新しい名を必要としている。」と聞き、南のお告げ所へ、名前をつけてくれる人間を呼びよせる方法を教えてもらいに行く。途中、群衆者イグラムールの毒で目的地の近くへ瞬間移動したアトレーユは、地霊小人の夫婦に手当てをしてもらい、同じくイグラムールの毒を受けた幸いの竜フッフールと出会う。ウユララのお告げを聞いたアトレーユは、フッフールに乗り、ファンタージエンの境を探し出す。しかし、大風坊主たちにファンタージエンに境がないことを知らされた彼は、フッフールとはぐれてしまった。アウリンをなくしたアトレーユは虚無に飛び込む狂気の者たちを目撃した後、化け物の町へ入る。そこで、かつて自分を追っていた人狼グモルクと対面する。闇の奥方の計略で捕まったグモルクは、虚無で囲まれた町で死を迎え、アトレーユにかみつく。あわや虚無に取り込まれそうになったバスチアンをフッフールが救い出し、ファンタージエンの中心であるエルフェンバイン塔へ向かった。

再びアウリンを手にしたアトレーユは幼ごころの君に一切を報告し、ウユララの門で見た少年が救い主であるはずだと知る。ところが、待っても待っても救い主は現れず、しびれを切らした幼ごころの君は、『はてしない物語』の書かれているさすらい山に行くことを決意した。さすらい山の古老に初めから『はてしない物語』を読むよう命じ、幼ごころの君は救い主を待つ。この時、『はてしない物語』の中にバスチアンが登場し、助けに行くことをためらっていた彼は「月の子、今いきます。」と叫ぶ。

同じ物語の無限ループから逃れたバスチアンは本の中にいた。月の子と対面したバスチアンは、アウリンを授けられ、新しいファンタージエンの創造主となる。何でもできるようになったバスチアンは、夜の森ペレリンを生み出し、色の砂漠ゴアプとグラオーグラマーンをつくる。銀の都アマルガントでアトレーユ、フッフールと出会い、三人の騎士と彼らは、バスチアンの帰り道を見つける旅を始めた。しかし、バスチアンは本当に帰りたいとは思っていなかった。アマルガントに自分の物語を集めた図書館をつくり出したり、常泣虫アッハライを道化蛾シュラムッフェンに変えたりと、彼は望みを次々とかなえた。旅の目的地をエルフェンバイン塔に変え、旅をつづけるバスチアンは、美男子で強く、無尽蔵の体力を持ち、尊敬を集める存在になっていた。しかし、望みをかなえるごとに元の世界の記憶を忘れていき、疑い深く高慢にもなっていた。

この負の人格は女魔術師サイーデを従えてからより肥大化し、ついには最良の友アトレーユとフッフールを追放するまでになった。サイーデに心をあやつられているバスチアンは主のいないエルフェンバイン塔に最も賢い存在となって入り、幼ごころの君の地位を継ぐと宣言した。彼の即位式の日、エルフェンバイン塔を舞台にアトレーユ率いる一団とバスチアンに味方する一団とが争う。アトレーユ軍優位だった戦況は、バスチアンが自ら抜くと災いをもたらすというシカンダでアトレーユを刺したことで逆転する。燃えるエルフェンバイン塔を背に、怒ったバスチアンは反乱軍を単独で追ったが、金属の馬を乗りつぶし、元帝王たちの都を見つける。管理をしているサルから、この町には幼ごころの君にとってかわったり、そうしようとしてすべての記憶を失った人が住んでいると知り、自分も住人になりそうだとわかる。

残りわずかな記憶で元の世界へ帰ろうと思った彼は、霧の海を渡り、アイゥオーラおばさまの変わる家につく。そこで最後の望みが「人を愛したい」だと気づく。彼はヨルの元で自分の夢だった絵を自分に残る最後のものとして手に入れ、生命の水を探す。ところが、シュラムッフェンに不満をぶちまけられた時にその絵は壊れてしまった。そんなバスチアンのところへアトレーユとフッフールが来てくれる。アウリンから手を離したバスチアンは、彼らと生命の水の所へつく。バスチアンに代わってアトレーユが問いに答え、生命の水を飲むことを許してもらった。ファンタージエンで得た全てのものを失ったバスチアンは元の世界の記憶を取り戻し、アトレーユたちと約束をかわして「父さん」と叫んだ。ファンタージエンから去ったのである。

元の世界に帰ったバスチアンは、心がすっかり変わっていた。母が生きていたころのように戻った父と再会し、コレアンダー氏に『はてしない物語』を盗んだことと、なくなったことを伝えにいく。コレアンダー氏もまたファンタージエンを救ったことがあり、バスチアンに『はてしない物語』に対する自分の思いを語った。再会を約束し、店を出たバスチアンは、父と祝いの日を過ごす。新しい日常の始まりであった。

 

『はてしない物語』全体の要約

H.Aoni

Ⅰ ファンタージエン国の危機

ファンタージエンのあらゆるところから、幼ごころの君への使者が送られる。全員、「虚無」についての知らせをもって……。しかし、幼ごころの君も臥せておいでだった。

Ⅱ アトレーユの使命 ~ ⅩⅡ さすらい山の古老

アトレーユは、自分を守り、導いてくれるアウリンを、幼ごころの君から託され、大いなる探索の旅に出る。

太鼓の媼モーラは、幼ごころの君に新しい名をさしあげる者がファンタージエンを救うと、彼に伝え、行くことのできないところにいるウユララが、その人物を知っていると言う。

しかし、彼は、群衆者イグラムールとの取り引きのおかげで、ウユララのそばにいる夫婦隠者のもとへ行くことができ、さらに幸いの竜、フッフールも従える。夫婦隠者の世話になって、三つの神秘の門を通り抜けるとき、アトレーユはバスチアンの姿を見、その後、一切の記憶をなくす。

ウユララは、「人間」がファンタージエンを救う、とアトレーユに告げる。南のお告げ所を出て、記憶を取り戻したバスチアンは、「人間」の住む外の世界への入り口を探す旅に出る。

しかし、大風坊主の口から出た言葉には失望し、大風のおかげでフッフールともアウリンともはぐれてしまう。アトレーユが落ちたのは妖怪の国で、そこで彼も虚無に襲われ、危機一髪で助かる、という目にあう。

その後、孤独なアトレーユは、人狼グモルクから、人間界へ行くのなら、虚無に飛び込み、人間から「いつわり」と呼ばれるようになればいいのだと教わり、おまけにかみつかれ、周りに虚無が迫る。が、アウリンを持ったフッフールが彼を助け、幼ごころの君に真実を伝えるために、1人と1匹はエルフェンバイン塔へ戻る。

一方、バスチアンは幼ごころの君を目にし、彼女の名をひらめく。知らぬまに、このあかがね色の、アウリンを持った本にとりこまれて行く。

アトレーユは、自分の旅は人間界にいる人のためのものだと知る。しかし、その人は一向にやってこない。幼ごころの君は仕方なく、さすらい山の古老の元へ行き、『はてしない物語』を語らせる。それはバスチアンが今手に持っている本の内容で、無限ループにはまってしまう。そこから抜け出すためにも、バスチアンはあのとき思いついた名を叫ぶ。

ⅩⅢ 夜の森ペレリン ~ ⅩⅩⅤ 絵の採掘坑

モンデンキントの名を口にしたバスチアンは、自分のなりたい姿になる。そこからアウリンを手に、次々と望みを叶えていき、たくさんのものをつくり出す。

グラオーグラマーンからは、剣シカンダをもらい、シカンダが自ら飛び出したときのみ使うことを約束する。

アマルガントではアトレーユとフッフールに出会う。そうやって望みを叶えていくうち、人間界での記憶をなくしてゆく。それを忠告したアトレーユを、バスチアンはうっとうしく思う。さらに、人間界へは帰る気はないと言い、幼ごころの君の元を目指す。そのうち、バスチアンの周りは、バスチアンに敬意を表すためにやってくる使者たちで埋まっていった。

バスチアンが皆に恐れられる存在になりたいと望むと、サイーデが現れる。バスチアンは彼女を従え、勝利に胸を躍らせる。その後、彼はアトレーユと仲たがいをし、サイーデはほくそ笑む。

エルフェンバイン塔に着いたものの、幼ごころの君がいないと知ったバスチアンは腹を立てる。さらに、友達を盗っ人として追い出し、知らぬまにサイーデの計画通り事が運ぶ。バスチアンは自分が帝王幼ごころの君になることにし、即位式の日をむかえる。しかし、友に反抗し、友を助けるために兵をあげたアトレーユに台なしにされ、バスチアンは彼を憎み、シカンダを自らの意思で抜き、かつての友の胸を突く……。

その後、バスチアンはムチャクチャにアトレーユたちを追いかけるうちに、「元帝王たちの都」に迷い込む。そして、アトレーユのおかげでこの場所で一生過ごさなくてすんだことを知り、後悔する。シカンダも土の中に埋める。イスカール人と生活しているとき、彼は、個人として愛されたいと望む。

バスチアンはアイゥオーラおばさまのもとでしばらく暮らし、愛情をたっぷりもらう。そして、真の望みが「愛すること」だと気がつき、生命の水の元へ出発する。

ミンロウド坑では自分の忘れた夢の絵を探す。それを見つけたとき、彼は自分の名を忘れる。絵も壊され、絶望したとき、アトレーユとフッフールが現れる。

<エピローグ> ⅩⅩⅥ 生命の水

名のない少年がアウリンを下に置くと、そこは生命の水となり、悦びの声が問いかけてくる。アトレーユは少年のかわりに全ての質問に答え、「本当の」バスチアンに戻す。そしてバスチアンは最愛の友たちと別れを告げ、いるべき所へ戻る。バスチアンは父との再会を喜ぶ。自らコレアンダー氏に許しをこい、『はてしない物語』について語り合う。

『はてしない物語』各章の要約

T. Kagaya

プロローグ
いじめの標的となるバスチアンは、ふと本屋へ逃げこみ、主人との会話の後、『はてしない物語』に目をうばわれ、盗みを犯すが、父にも打ち明けられず、学校の屋根裏で本を読み始める。

Ⅰ ファンタージエン国の危機
真夜中、一匹の鬼火が使命を負って旅路を急ぐ中、三人の異なる種族の者が火に身をよせあっていた。これらが出会い、会談したのち、四人は幼ごころの君の所へ別々にむかっていった。使命とは、ファンタージエン国を襲った不可解な禍いの報告であった。

Ⅱ アトレーユの使命
幼ごころの君の容態は、医学的に治療が不可能と判断し、医師たちは当惑していた。その時、偉大なケンタウロス、カイロンが現れ、幼ごころの君の命を受け、勇士アトレーユを探しに旅へ出た。そして、何のへんてつもないアトレーユに疑惑をいだくが、理解したのち、行き先もわからぬ探索の旅に送り出す。

Ⅲ 太古の媼モーラ
アトレーユはおもむくままに馬を走らせた。そして、いく晩も狩りの夢によって不安・疑惑をおぼえた。その後、奇怪な事実を目視する。虚無だった。そして、殺しそこねた牡牛のおつげを聞き、愛馬をうしないながらも、憂いの沼へたどりつく。アトレーユは、幼ごころの君をすくうには、外界の者が名をさしあげなければならないと知る。

Ⅳ 群衆者イグラムール
アトレーユは、死の山脈へまよいこむ。また、彼はつけられている事に気付かず、さまよい続けた。アトレーユは、イグラムールに出くわし、つかまった幸いの竜を欲しいと申し出るが拒否される。しかし、イグラムールにかまれた者は、一時間どこにでも行けるという秘密を知り、かみつきを受け、南のおつげ所へ行った。そこへ追手がくるが、臭跡はとだえた。

Ⅴ 夫婦隠者
アトレーユと共にフッフールは、三つの神秘の門へ着くが気を失う。また、夫婦隠者の看護により、イグラムールの毒は調和された。そして、観測所には、スフィンクスが息づいていた。

Ⅵ 三つの神秘の門
アトレーユは、エンギウックに三つの神秘の門について、順に問い質していった。しかし、隠者共々干渉し合い、後には癇癪を起こした。アトレーユは礼を述べ、大いなる謎の門へ足を踏み入れ、南のお告げ所、秘めたる宮殿へと歩んでいった。

Ⅶ 静寂の声
静寂の声は、忘却の彼方におしやられたアトレーユの耳に響き、「虚無の魔手から救える者は、外国にいる」とのこと、奇想天外の事実を告げた。探索者は、意識回復の後、夫婦隠者に別れを告げ、空中飛行の旅に出た。

Ⅷ 妖怪の国で
アトレーユは空中高く天翔り、任務・方針について考える。そして、五里霧中で大風坊主の元へ行くが、ファンタージエンが広大無辺ということに驚く。風にのまれ、全てを失った。また、奇怪な物事の行く先、それは古くさびれた城門だった。

Ⅸ 化け物の町で
フッフールが血眼になって探していた頃、アウリンをなくしたアトレーユは廃墟をさまよっていた。突如咆哮が聞こえ、そこには人狼がいた。人狼との対話の中、「人間界には虚無に飛び込むといけるが、虚偽になる」と知り、恐れを抱く。アトレーユは、人狼の任務について一部始終聞き、名をあかすと、脚をかまれた。今もなお、虚無はファンタージエンをおおっている。

Ⅹ エルフェンバイン塔
アウリンはフッフールによって見つけられ、アトレーユの元へ導いた。そして、人狼を引きはなした。フッフールは虚無の力をのがれ、侵蝕されかけているエルフェンバイン塔へたどり着く。アトレーユは、望みを統べたもう金の瞳の君を見る。バスチアンは、幼ごころの君の新しい名モンデンキントを思いつく。

ⅩⅠ 女王幼ごころの君
アトレーユはアウリンを返上し、論争する。そして探索者は、幼ごころの君はアウリンを通じてアトレーユの旅を見ていたこと、自分の長く危険にみちた旅によって人間界から救い主をよび出せるということを知る。だが、バスチアンは来ず、幼ごころの君はさすらい山の古老に頼ることを決め、運命山へ向かった。

ⅩⅡ さすらい山の古老
幼ごころの君は、さすらい山の古老の警告の中をつき進み、ファンタージエンの記憶を、はてしない物語を語れと命令する。バスチアンは、本の中の自身の存在に驚いた。古老は書き、語った。自身の必要性を理解したバスチアンは、「モンデンキント」とさけび、ファンタージエンに入りこんだ。

ⅩⅢ 夜の森ペレリン
バスチアンは、望みを統べた君と対面するが、突然無限の可能性が広がり、躊躇う。しかし、彼の小さな願いが、小さな粒から生命を、草木を創造し、尽きることなく成長させた。やがて森となり、「夜の森ペレリン」と命名。月の子は去るが、名代であるアウリンを残した。バスチアンは望みを次々に出し、自分の国ペレリンを拡大させたいった。

ⅩⅣ 色の砂漠ゴアプ
夜が明けたかと思うと、ペレリンの森が解体し、色の砂漠ゴアプができ上がった。バスチアンは、みなぎる力と引きかえに記憶を徐々に失っていることに気付いてはいなかった。そこへ炎熱の中、巨大なライオンが現れ、バスチアンの足にひざまづいた。グラオーグラマーンは、自身と砂漠との関係を述べた。そして、宮殿へ向かい、ライオンは死をむかえ、朝を待った。

ⅩⅤ 色のある死グラオーグラマーン
夜になると死に、朝になると甦ると知ったバスチアンは、グラオーグラマーンの存在意義について教える。ライオンは一振りの剣を取り出し、自分の意思でぬかぬよう忠告する。バスチアンはシカンダと名付ける。そして、色のある死に、過去は物語と共に成立すること、アウリンは真の意思を見つけるためにあると教わる。バスチアンは、千の扉に入っていった。

ⅩⅥ 銀の都アマルガント
バスチアンは、千の扉の寺院に入る。そして、アトレーユに会いたいと望み、銀の都アマルガントに向かう勇士ヒンレックとその一行に出会う。また、救い主の捜索と警護をする者の選抜を行う競技会でヒンレックに戦いをいどみ、シカンダの力を見せつけ、打ち負かし、アトレーユと対面する。

ⅩⅦ 勇士ヒンレックの竜
バスチアンは、アトレーユにアウリンを返そうとするが断られる。そして物語好きのアマルガント人に、図書館をつくり、喜ばれる。また、バスチアンは、竜スメーグにオグラマール姫がさらわれるという物語をつくり、勇士ヒンレックは竜を打ち負かし、姫を救出する。バスチアンは旅を続け、アトレーユは、バスチアンが人間界へ帰れるよう協力するが、彼はファンタージエンから帰りたいと思わなくなる。

ⅩⅧ アッハライ
困難な旅路の中、一行はへこたれずバスチアンの帰路を最優先に考えて進み、夜を過ごすために洞穴へ入った。アトレーユは、バスチアンに人間界について尋ねるが、疑問が残った。彼はバスチアンの日々の細々としたことに注目し、アウリンによって人間界の記憶が消えている事を察する。深夜、二人はアッハライと出会い、彼らの姿をかえ、慈善者と語られる。翌日、シュラムッフェンが現れさわぎたてる。バスチアンは自分の善行を語り、シュラムッフェンは、騒音をたてながら渦を巻き去っていった。

ⅩⅨ 旅の一行
バスチアンは人間界に戻ろうとは考えなかった。一行は、バスチアンの望みがとだえ行き先を失った。バスチアンは再びアウリンの力を使い進んだ。やがて、追跡者と思われたが訪問者があらわれ、総勢百人となり、エルフェンバイン塔へ向かった。

ⅩⅩ 目のある手
一行は、魔城へ向かう。バスチアンは「おひかりをはずす」というアトレーユの提案を打ち切る。そのころ、一行はサイーデによる奇襲をうけていた。バスチアンは城へ侵入し、三人の騎士を救った。サイーデはおとなしく降伏し、月の子へ会うために協力しろと命ずる。フッフールは、この女を嫌い、サイーデはにやりと笑った。

ⅩⅩⅠ 星僧院
バスチアンは、権威を増しサイーデをよく用いたが、サイーデがアトレーユらを批判した事を叱る。バスチアンは真の意思を見出すために、ファンタージエン中最も知恵のある賢者になりたいと望む。そしてバスチアンは星僧院の沈思黙考師にこの世界の謎について説く。また、三人の沈思黙考師は初めて意見の相違が生じ、それぞれ新しい僧院を創設した。

ⅩⅩⅡ エルフェンバイン塔の戦い
バスチアンは、アウリンを手放すことを恐れた。ところがエルフェンバイン塔には彼女はいなかった。アトレーユは、アウリンを盗もうとするが、バスチアンにとらわれ、永久追放される。そこでサイーデは帝王になるよう勧める。アトレーユは反旗をあげ、彼を助けるためにおしるしを取り上げようとする。しかし、バスチアンは、シカンダを強引にぬき、アトレーユに致命傷をおわせた。バスチアンは逃走したアトレーユを追わせた。

ⅩⅩⅢ 元帝王たちの都
バスチアンは復讐に燃え、元帝王たちの都についた。彼は、この町の監視人アーガックスに出会い、アウリンの効力には限界があると知る。バスチアンは、アトレーユに対する復讐心を無くし、町を出て、シカンダをうめた。そして、霧の海にうかぶいかだの町イスカールにつく。そして自ら名をかくし、「ひとり人」と名乗り、船に乗り、霧の海を渡り、バラの森に入っていった。

ⅩⅩⅤ 絵の採掘坑
バスチアンは、絵の採掘坑で盲目の坑夫ヨルと一時を過ごす。バスチアンには自身の名以外の人間界の記憶は残っていなかった。そこで、ミンロウド坑、ファンタージエンの記憶へ降り、忘れた夢、生命の水へ導く一枚の絵を探し求めた。そして、雪原で絵は砕けるが、旧友、幸いの竜フッフールとアトレーユと再会する。

ⅩⅩⅥ 生命の水
アウリンは姿をかえ、名のない少年を生命の水へ導いた。そして、バスチアンは真の意思を見出し、歓声を上げた。また、アトレーユにファンタージエンではじめた物語に結末をつけてほしいとたのみ、「父さん」と叫び、人間界へ戻ると、父の元へ急ぎ、仲をとりもどす。そして、コレアンダー氏の古本屋へ行き、ファンタージエンへの入口は他にもあるということ、名付けなおせば幼ごころの君の元へまた行けると教わる。