福西です。
アトリーの「グレイラビット」のシリーズを読んでいます。
この日は、2冊目の『フクロウ博士のおひっこし』(アトリー、みのうらまりこ訳、偕成社)を読みました。
フクロウの家が嵐で倒れます。グレイラビットは、フクロウの困窮を思って、家に招待しようと考えます。しかし同居人のヘア(ウサギ)とスクィレル(リス)が「正気かい?」と反発。フクロウは小動物にとって怖い存在だからです。そこで別の家を世話することになりました。
三人は手分けして、「穴のあいた大木」を探します。ヘアとスクィレルは、寄り道の方が楽しくなり、目的を果たさずに家に帰ってきます。一方、グレイラビットは一晩たっても帰ってきません。
その間、フクロウは図々しくもグレイラビットの家のまき小屋に居候します。フクロウが偉そうにするので、ヘアとスクィレルは腹を立てます。次の日、グレイラビットが帰ってきます。彼女は、発見した大木に一人で野宿し、心細い思いをしたのでした。(このときの森の薄気味悪さが、アトリーならではだと思います)
三人は、見つけた木をさっそく掃除して住めるようにし、「前よりも素敵な家だから」と、フクロウを引っ越させます。この時、ヘアはのこぎりでドアを作るという活躍をします。
フクロウは(小動物から恐がられていたことに無頓着なまま)感謝し、三人にプレゼントを贈ります。
余談ですが、フクロウが嵐で倒れた家から引っ越すという筋は、ミルンの『クマのプーさん』にもあります。
ミルンの描くフクロウは、知ったかぶりがばれないように悪戦苦闘し、周囲にも気を遣わせるといった、抜けていて頼りない存在です。一方、アトリーの描くフクロウは、たいへんな物知りで頼れる存在です。しかし相談にただで応じることはなく、対価を要求します。それは厳格ではあっても、無法ではありません。今回のお話のように、他人にしてもらったことに対しては、自分もきちんと対価を払います。
グレイラビットのお話シリーズでは、「森」が恵みの場所であると同時に恐い場所でもあることを悟るグレイラビットの、またフクロウのような怖さ(いわゆる社会の掟)を避けずにそれと付き合う彼女の健気さがよく描かれています。