福西です。
ウェルギリウス『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)を読んでいます。
いよいよ第4歌に入りました。
第2歌、第3歌で聞き手だったディードーに変化が生じます。
ディードーは、第1歌で少年アスカニウスを膝に抱きながらアエネーアスの話を聞いています。しかしそのアスカニウスは変装したクピードーであり、ウェヌスの計略なのでした。
ウェヌスがクピードーに言ったセリフです。
1.688
occultum īnspīrēs ignem fallāsque venēnō
オックル・ト(ゥム)ィンスピー・レーシグ・ネムファッ・ラースケウェ・ネーノーお前は吹き込め(īnspīrēs)、隠された(occultum)火を(ignem)。
そして(que)お前はだませ(fallās)、毒で(venēnō)で。
その結果が、第4歌の冒頭につながります。
4.1-2
at rēgīna gravī jamdūdum saucia cūrā
vulnus alit vēnīs et caecō carpitur ignī.アトレー・ギーナグラ・ウィーヤム・ドゥードゥム・サウキア・クーラー
ウルヌサ・リトウェー・ニーセト・カエコー・カルピトゥ・リグニーさて(at)
重大な(gravī)苦しみで(cūrā)傷つけられた(saucia)女王ディードーは(rēgīna)、
ずっと(jamdūdum)、
(恋の)傷を(vulnus)血脈で(vēnīs)育てる(alit)。
そして(et)見えない(caecō)火で(ignī)浪費される(carpitur)。
アエネーアスの話を聞く間(jamdūdum)、クピードーの愛欲の毒がディードーの全身に回り、その心を懊悩の火がすっかり焼いてしまったのでした。
第4歌の「見えない火(で)」(caecō ignī)と、第1歌の「隠された火(を)」(occultum ignem)が対応します。