定跡を覚えるということ

入角です。本日は確率の分野の問題演習とその解説を行いました。そして、授業の後半では、今後の方針や数学の勉強法について話しました。今日のブログでは、授業中に話した数学の勉強法について少し書いていこうと思います。

今学期より開設された本講座ですが、実際に授業をしてみて得た手応えをもとに、授業の進め方を見直しつつあります。数学的思考力を培うためには、講義を聞くだけではなく、自分で問題を解くことが大切です。そこでこの授業では、(僕がたくさんしゃべりたいという気持ちを少し抑えて)生徒さんに問題を多く解いてもらうことにしていました。しかし、問題を出してその解説をするだけではまだ不十分なのではないかと思いました。将棋がうまくなるには、将棋をたくさん指すことも大事ですが、まずは定跡を覚えることです。数学もそれと同じで、問題を解く前に、既に覚えておかなければならない定跡のようなものがあります。ここでいう「覚えておくべき定跡」とは、定理のことではありません。典型問題の解き方のパターンのことです。これを覚えておくことが、数学的思考の基礎になります。本来、数学の勉強時間のうちの意外と多くの時間が、パターン暗記に充てられるべきなのです。

これを読んで、「なんだ、数学は結局暗記なのか」と落胆するのは早計です。将棋の勉強が定跡の習得に終始するものではないのと同様に、数学の勉強も暗記に尽きるものではありませんし、それに、パターン学習というものも、実際にやってみると案外そのなかに発見があるものなのです。パターンを覚えてゆけばゆくほど、数学的センスが磨かれてゆくと言ってよいでしょう。何にせよセンスというものは、ある程度のパターンの蓄積があってはじめて生まれるものだと思います。

そこで、本講座は「数学を哲学する」と銘打っていますが、今後は典型問題のパターンの習得にも力を入れ、それに加えて思考力を問う問題に挑戦する形を採ろうかと考えています。パターン学習を重視するやり方は、数学的思考力の涵養を目指す本講座の当初の理念と矛盾しません。それどころか、本気で数学が得意になろうと思ったら、定跡は避けては通れないのです(数学は「嗜む程度」という距離感で付き合うのは難しい学科だ、というのが僕の持論です。数学の面白みを理解するためには、努力すべきところは徹底的に努力しなければなりません)。授業で扱える問題の数は限られていますので、今後は宿題も出すかもしれません。なお、これまでは生徒さんがともに高1ということで同時に教えていましたが、今後は個別的に教えてゆく予定です。