「はてしない物語」を読む(2020/2/13)

福西です。

『はてしない物語』(エンデ、上田真而子ら訳、岩波書店)、「18 アッハライ」を読みました。

バスチアンは「善良で無私の人になって、他人から尊敬されるようになりたい」という望みを抱きます。

醜い芋虫のアッハライという生き物が登場します。その生業は自分の涙を使って精巧な銀細工を作ること。バスチアンは「ぼくが救ってやろう」と言い、彼らを道化の蛾シュラムッフェンに変身させます。しかし、蛾はバスチアンを馬鹿にしながら、笑いをふりまいて飛び去ります。バスチアンは良いことの真偽が分からなくなり、さらに自身がバスチアンという名であった記憶を失います。(*)

アトレーユとフッフールは、バスチアンの記憶喪失の原因がアウリンにあると気づきます。けれどもそう告げても、バスチアンは幼ごころの君からもらったものが、罠であるはずがないと言って、一向に意に介しません。

このあたりから、バスチアンの気付かないうちに、内面の危機が生じます。だんだん「望みを持つこと」自体が虚しくなっていくのでした。

次回は「19 旅の一行」です。バスチアンは旅の目的を「元の世界に帰ること」から「幼ごころの君に会うこと」に変更します。果たして、その「望み」はかなうのでしょうか?

 

*【追記】2020/2/21

バスチアンはぼんやりと立ちつくしていた。もう、自分がほんとうはなんという名前なのかわからなくなっていた。(「18 アッハライ」)

とテキストにあるのをかん違いしました。バスチアンが本当に名前を失うのは、もっと後のことです。

こうしてバスチアンは、覚えていた最後のもの、自分の名前を忘れた。(「25 絵の採掘坑)

謹んで訂正いたします。