福西です。冬学期もよろしくお願いいたします。
『はてしない物語』(エンデ、上田真而子ら訳、岩波書店)、「ⅩⅤ 色のある死グラオーグラマーン」の前半を読みました。
朝になり、石からライオンの体に戻ったグラオーグラマーンは、バスチアンが涙を流してくれたことを知ります。
バスチアンは、ライオンが死んでいる間、夜の森ペレリンが色の砂漠ゴアプにとってかわり、そしてまたライオンが目覚めると、ゴアプがペレリンになるのだということを、ライオンに教えます。
ライオンとバスチアンの絆が深まります。
「おまえはいつも一人きりなのかい?」
ライオンはまた立ちどまったが、今度はバスチアンを見なかった。
これまでのグラオーグラマーンは、一人きりということについて何か意義を見出そうとし、長い間一人で考えた末、あきらめてしまったかの様子でした。そんな折に、グラオーグラマーンは、その火で死なないバスチアンと出会ったのでした。
バスチアンもまた孤独です。ファンタージエンにおいて、彼とライオンとは、鏡映の関係だと言えるでしょうか。
二人の問答から、ライオンは次のような理解を得ます。
今、わたくしにはわかりました。わたくしの死が生をうみだし、わたくしの生が死をもたらす、そして両方ともそれで善いのです。
感謝をおぼえたグラオーグラマーンは、一振りの剣をバスチアンに贈ります。それは昔からバスチアンのために存在していたかのようでした。その剣にバスチアンは「シカンダ」という名前を与えます。すると剣はみずから鞘を飛び出し、羽のような軽さでバスチアンの手におさまるのでした。この剣で切れないものはファンタージエン中には一つもないということでした。
しかし、ライオンは一つだけ忠告します。
今のようにひとりでに手の中にとびこんでくるときだけ、使ってもよいのです。(…)しかしながら、もしご自身の意思でこれをさやからひきぬかれるならば、ご自身とファンタージエンに大きな禍いがもたらされます。
と。要するに、無理やり引き抜いてはいけないということでした。バスチアンは、「忘れない」と約束します。
受講生のFちゃんが、テキストの「もの思いに沈んだ」という表現に、「訳者さんはここを『源氏物語』とか『更級日記』みたいな表現で訳したんだなあ」と言って注目してくれました。
ドイツ語の原文でどうなっているのか、また次回に確認できればと思います。