福西です。
『はてしない物語』(エンデ、上田真而子ら訳、岩波書店)を読んでいます。
「ⅩⅣ 色の砂漠ゴアプ」を読み終えました。
バスチアンは色の砂漠ゴアプで自身の不撓不屈さを証明した後、あらたな欲望がもたげます。怖がりではないことを証明するような、危険に出会いたいと。
そこへ、大きなライオンが現れます。名はグラオーグラマーン。その動くところに砂漠が生じ、砂漠から一歩も出たことがないと言う彼は、いわば砂漠のご本尊です。その砂漠では生き物はみな枯れてしまうため、彼もまた、バスチアン同様に孤独でした。
バスチアンとライオンは、にらみ合いを続けます。やがてライオンの方が首を垂れ、バスチアンに臣従します。バスチアンはアウリンを持つおかげで、グラオーグラマーンの熱さにやられることがありません。ずっと独りだったグラオーグラマーンにとって、バスチアンは、ファンタージエンで会話できる唯一の存在でもあるのでした。一方、バスチアンもいまだかつてない愛情をおぼえます。アトレーユが、アルタクスやフッフールに抱いたのと同じようなそれを。
グラオーグラマーンは、バスチアンを背に乗せ、自身の宮殿へ運びます。
日が沈み、夜の森ペレリンが再び成長を始めると、色の砂漠ゴアプはなくなります。と同時に、グラオーグラマーンもまた、岩のように動かなくなってしまいます。
バスチアンは彼が死んでしまったと思い、真剣な涙を流します。
石になったライオンの顔が、かれの涙でぬれた。大きな前脚の間にうずくまって泣くうちに、バスチアンはいつのまにかそのまま寝いってしまった。
バスチアンがファンタージエンで経験する事のリアルさが、ひしひしと伝わってくる章でした。
『はてしない物語』は、この後もさらに面白くなっていきます。