同一法、モーリーの定理、作図不可能問題(11/25授業)

 同一法とは、「A⇒B」が真であり、かつ性質Bをもつものが唯一であるならば、「B⇒A」という逆定理も成り立つという、数学における証明手法のひとつです。今日の授業では最初に生徒さんに幾何の証明問題を解いてもらいました。実はこの問題は真正面から解こうとすると多くの計算を要するのですが、同一法を使って解けば一瞬で証明できるというものでした。同一法は、三平方の定理の逆やチェバの定理の逆など、さまざまな場面で使えます。
 数学における証明方法は、同一法のほかに、対偶法、背理法、数学的帰納法があります。授業では、背理法を使った√2が無理数であることの証明を確認しました。
 モーリーの定理とは、「三角形のそれぞれの内角の三等分線の交点のうち、辺に近い三点を結んでできる三角形は正三角形である」という定理です。この定理はあまり実用的ではありませんが、その芸術性の高さを僕は気に入っており、体験授業で前回紹介していました。そこで今回の授業ではこの定理の同一法を使った証明を示しました(時間がなかったので概略だけしか解説できず、完全な証明はプリントで配りました)。モーリーの定理にはこのほかにもさまざまな解法が存在するので、ぜひチャレンジしてみてください。
 ちなみに、モーリーの定理が証明されたのは実はけっこう最近のことで、1899年だそうです。この定理の発見が遅れたのには理由があるように思われます。「図形の三大不可能問題」という古代ギリシアの由緒ある作図問題のひとつに、「任意の角を、定規とコンパスを有限回使って三等分する」という問題があります。実は一般には角の三等分は定規とコンパスを有限回使うだけでは作図不可能なのですが、作図不可能であることが示されたのは1837年のことでした。モーリーの定理のようなシンプルで初等的な定理が長く未発見であったのは、数学者たちの意識が作図不可能問題のほうに逸らされていたからかもしれません。 入角晃太郎