福西です。
受講生が作ってくれた俳句を返却しました。そのうちから二句紹介します。
めだかのこははのちかくでおよいでる Kouta
目高が夏の季語です。「はは」は、意味的には「目高の母」です。小さい目高が大きい目高のそばで泳いでいる、と。ところがそれだけではありません。「めだかのこ」で軽く切って読むとき、それに続く「ははのちかくでおよいでる」には、一瞬、人間の親子が連想されます。それがこの句の余韻だと思います。私個人は、人間の母子が川遊びをしていて、子の追いかけた目高が母のそばまで逃げていき、そこで憩っている、それを子が不思議そうに指さしている、というように読みました(もちろん正解ではありません)。そのように「意味」ではなくて「イメージの広がり」で読者ごとに味わえることは、俳句が散文ではなくて詩だからだと思います。
電車ぐもまどのむこうにみつけたよ Sui
季語に代わる「電車ぐも」が詩情たっぷりです。作者が窓をじっと見つめながら、ぽつぽつと横に広がる秋の雲に対して、この表現を見つけた時の喜びが伝わってくるかのようです。雲が、夏の間は一個で大きかったのが、この頃はだんだん分離していき、鰯雲に近づいていることを作者は感じ取っています。この句は中七の調べを整えるのに少し苦労しましたが、「まどのむこうに」で落ち着きました。五七五の定型のリズムに、思わず繰り返し口ずさみたくなる一句です。
『黒ねこサンゴロウ3 やまねこの島』(竹下文子、偕成社)の4と5を読みました。
ナギヒコとサンゴロウが貝がら島に到着しました。島の景観や、見慣れない植物に、ナギヒコは「蛇が出てきそうだ」と警戒気味です。二人は旅の目的である、島の「カレハ熱」を看病する施設を訪れます。そこで貝がら島の長老(カシザエモン)と若い医者のクルミに会います。
クルミの知っている罹患者は十九人。うち五人が死亡。症状は高熱と全身の震え。ナギヒコはクルミに処方を聞きます。キナの実を煎じた解熱剤を使っているが、一時的な効果しかないとのこと。ナギヒコはアオトリガイがあれば、と洩らします。
ここまで読んだ後、1ページずつ内容を振り返りました。