福西です。この日は、エラトステネスのふるいをしました。
(このように6列の数表を用意します) (ふるいを実行し、残った数が素数です)
「エラトステネスのふるい」とは、2の倍数、3の倍数、5の倍数、7の倍数…と、表にある数を順番に消していく(ふるいにかける)方法です。
このやり方で問題となるのは、順番に倍数を消していくと言っても、それが何の倍数までふるいにかければよいのかということです。たとえば上の表で、100までの素数を知るために、99の倍数までふるいにかける必要があるのでしょうか? そこが実際的で、そして一番の疑問点です。
授業では、まず経験的に素数を見つけるところからしました。その時、すでに生徒たちは自分で「偶数をまず消す」ということや、「4の倍数はさっき2の倍数で消したから消す必要がない」ことも見つけてくれていました。そして、
「4の次は?」
「5(の倍数)を消さなあかんなあ」
「なら、6の倍数はどうする?」
「さっき偶数を消したときに、消えているから消す必要はない」
「じゃあ、7の倍数は?」
「まだ消えてない。だから消す必要がある」
「8の倍数は?」
「これも偶数のときに消えている」
「9は?」
「3のときに、一緒に消えている」
「10は?」
「5のときに消えている」
と。このように、エラトステネスのふるいを知らないところで、ほぼ実際のそれと同じ物を自分たちで発明してくれたことになります。これには驚きました。それは、あたかも道具のない無人島で、自分で道具を発明して、それを使ってサバイブしてくれるかのような、頼もしいことだと感じました。
そして、100までの数で、きっちり25個の素数を見つけ出してくれました。お見事です。
さてここで私の方から「11の倍数は?」と質問したとき、Ta君が、
11×2=22、11×3=33、11×4=44…11×9=99
という数の並びについて、
「それらは×2、×3…×9としている時点で、すでにそれまでに考えた(9までの)倍数に含まれている」
ということを見抜いてくれました。なので、それらを考える必要はない、と。そしてTa君が続けて言うには、
「だから、11×10=110で、その時点で(今考えている)100を越えるから、11(の倍数)まで考えればよい」
と。(補足:正確に言うと、×11を「考える必要はない」と先に結論づけているので、「×10まで考えればよい」と言い直せます)。見事な考察です。
実際には、エラトステネスのふるいでも、Ta君が考察してくれたように、10の倍数までふるいにかければよいことになります。では、なぜ10までなのか、別の角度から少し光を当てて見ましょう。
そこで思い出すことは、「約数」です。
たとえば、12で考えると、
1×12
2×6
3×4
と来て、次に、
4×3
6×2
12×1
となります。よって、1、2、3、4、6、12が12の約数です。(そして1とそれ自身しか約数に持たない数が素数です)
ここで注目するのは、3×4と4×3です。ここは、ちょうど12にとって、かけ算の意味での真ん中にあたります。(もちろん厳密には√12×√12のことで、あとでこのルートが本質的な理解になります)。
さて、4×3とした時、ちょうど数が反転していることに気付きます。つまり、ここで「真ん中を越えた」からです。6×2も、2×6の反転です。要するに、真ん中を越えたところから、同じ数が繰り返し出てくることに気付きます。
また、12=2×6の意味するところは、「12が2で割り切れる」ということは、「12は6でも割り切れる」ということです。ということは6で割り切れるかどうかを調べるまでもなく、2を調べた時点で、それは調べたことになります。
もし12が、真ん中を越えた数である「5」で割れたとすれば、それは、真ん中を越えるまでの数で割れていることになります。
ということは、100の約数についても、真ん中は10×10なので、「10の倍数までふるいにかければよい」ことが分かります。
次回は、論理パズルにちなんだ、少し面白いことを実験します。「4回の質問で、相手に2回うそをつかせるにはどうすればよいか?」ということを考えてみます。