浅野です。
Kさんは引き続き三角比の範囲の練習をしていました。
前回は、図を描くのが難しいと、自分の課題を明確にしてくれていましたが、今回は式を立てられても計算ができないと、これまた正確に自分の弱点を把握してくれていました。
特にtan(正接)の計算では、二重分数や有理化の計算がややこしい場合があります。どちらも分数については分子と分母も両方に同じ数をかけるのが基本です。
三角比に限らず、数学的なセンスがある人ほど式を立てたら答えが出るはずなのであとの計算を省略しがちですが、意外と計算ができない場合があります。そしてその計算に本質が含まれる(この式だと実数の範囲に解はないなど)こともあるので、最後の手順まできっちりと詰めるということが大切です。
福西です。またまたお邪魔します。
K君頑張っていますね。
>特にtan(正接)の計算では、二重分数や有理化の計算がややこしい場合があります。
>どちらも分数については分子と分母も両方に同じ数をかけるのが基本です。
K君に私からもアドバイスとしては、tanθはいつでもsinθ/cosθで計算できるので、
tanにまつわる公式は特に覚える必要がないことに胸を張ってほしいと思います。
ただし計算する際には今まで習ったことを駆使すべしと。
今K君が浅野先生とされているのは、こんな感じの問題でしょうか。
問1 sinθ=1/2、cosθ=√3/2の時の、tanθを求めよ。
解答 tanθ=sinθ/cosθ=(1/2)/(√3/2)=1/√3 (横に書くと分かりづらいですが^^;二重分数の計算です。)
有理化の計算がややこしいのは、次のような時ですね。
問2 sinθ=√3ー1の時の、tanθを求めよ。(ただしcosθ>0とする)
解答
sin^2θ+cos^2θ=1より、
cosθ=sqrt(1-sin^2θ)=sqrt(1-(4-2√3))=sqrt(2√3-3) (>0)
*sqrt()は√()のことです。
tanθ=sinθ/cosθ=(√3ー1)/sqrt(2√3-3)
=(√3ー1)・sqrt(2√3+3)/sqrt(2√3-3)・sqrt(2√3+3)
…分子分母に同じ数sqrt(2√3+3)をかけた(これが分母の有理化)
=(6+3√3-2√3-3)/sqrt(12-9)
=(3+√3)/√3 (あるいは√3+1)
有理化のところで、ルートのルートが出てきても、以前やった因数分解の知識を動員して、(a+b)(a-b)=a^2-b^2を使えば、ルートが一重に戻るというのがミソですね。
ちなみに、「有理」と言うと何のことやらと、きっと最初習った時は思うかもしれませんが、これは英語で書くと「あ、なるほど」と思ってもらえるのかもしれません。
有理数:rational number=直訳=本来の意味:有比数 (ratioには「理性」と「比」という二つの意味があります→語源:ラテン語)
つまり、有理数というのは、有比数の誤訳(あるいは故意に?)です。そして有理数は「比になった数」つまり「分数」のことですが、その分数(有比数=有理数)に直すことを、本来なら「有比化」と呼ぶところが「有理化」となったわけです。
#故意にと言うのは、昔の数学者はきっと考えて名付けたはずだからです。たとえば、方程式の答のxを解と呼ぶのでも、ギリシア語でχのことを「カイ」と呼ぶからで、それの語呂合わせです。そのような巧いケースを考えると、うっかりratioを誤訳したとはちょっと考えにくいです。
さて設問で、「有理化せよ」と言われて、何のことやら言われたとおりのことを実行していると、いつの間にか、分母からルートがなくなっていることに気付きます。それが、分数になった、有理数になった、と言うことで、それが有理化だった、と言うわけです。
#もちろん、この有理化は有利だからするわけです(笑)
K君! これからも応援しています。
福西です。すみません、自己レスで…。
自分が長年間違って覚えていたことに今やっと気が付きました。
「有理化」というのは、(整数比の)分数に直すことではありませんね。
単に、√2などが無理数だから、その無理数を有理数にする(つまりルートをほどく)ことが、有理化ですね。
だから「分母の有理化」と言って、別に分子は有理化していないわけで…長年の誤解が解けました(笑)。
ちなみに整数比の分数(有理数)に直せない√2などを、無理数というわけですが、これも本当は意味だけなら「無比数」と言うべきところです。それを、かつてピタゴラス(の定理を作った教団)が、音楽や幾何学など自然界の美にたまたま整数比の調和が隠れていたことを秘密の教義とし、√2など整数比でない数の存在を認めなかったという歴史に引っ掛けて、「そんなの無理!」というわけで、irrationalをわざと無比ではなく無理と訳したのかもしれません(それで同時に有比が有理になったのかも)。あくまで想像ですが…。
数学の専門用語の訳語は原語と対照させてみると、いろいろおもしろいことがわかるのでしょう。今ぱっと思いつくところでは、タンジェントというのはラテン語のタンゴという単語(失礼!)の現在分詞ですね?ということは、数学のタンジェントは「接している」という概念と関係している?
福西先生、山下先生、いつもコメントありがとうございます。
このときしていたのは、ご推察の通り福西先生が例として挙げられているようなものです。二重根号はまだ出てきていませんが、いつ登場してもおかしくありません。
>単に、√2などが無理数だから、その無理数を有理数にする(つまりルートをほどく)ことが、有理化ですね。
だから「分母の有理化」と言って、別に分子は有理化していないわけで…長年の誤解が解けました(笑)。
私もなぜ有理化をしなければいけないのかずっと疑問に思ってきました。というのも、1/√2と√2/2を比べると前者のほうがすっきりしているように感じられますから。どちらにせよ、そもそも無理な数なのだから仕方ないのですね。
>タンジェントというのはラテン語のタンゴという単語(失礼!)の現在分詞ですね?ということは、数学のタンジェントは「接している」という概念と関係している?
やはりそのようです。以下の参考サイトを見つけました。
http://www.alc.co.jp/eng/vocab/etm-cl/etm_cl098.html
その手の話としては、function(y=f(x)のfはこの頭文字)の日本語訳が、もともとは「函数」だったと聞いたことがあります。自動販売機のように、内部はよくわからなくとも、函(はこ)の中に何かを入れると、別の何かが出てくるようなイメージです。現在の「関数」よりイメージが湧きやすいかもしれません。
tango の語源について、アルクのページをご紹介いただき、ありがとうございました。そこに contact を例にあげていて、tact (ふれる)と書いていますが、tango の完了分詞が tactum ということで、tact はそこからできた言葉でしょう。tact を含んだ語となるといっぱい見つかります。自分でも、HPにこのネタで書いていたのでした(笑)。我田引水?
http://www.kitashirakawa.jp/taro/eigo53.html