福西です。
『はてしない物語』(エンデ、上田真而子ら訳、岩波書店)を読んでいます。
「Ⅲ 太古の媼モーラ」の後半(p77-88)を読みました。
アトレーユは嘆きの沼に着きます。その沼で、愛馬アルタクスを失います。
最初アルタクスは沼に入りたがらなかったのですが、アトレーユは使命のために前へ進みます。するとアルタクスはしだいに心と体を沈ませていきます。
「夢でごらんになっただけのことをさがしてこうしてやってきても、なんにも見つかりはしないでしょう。どっちみち、もう手遅れかもしれないです。もしかすれば、幼ごころの君はもうおかくれになっていて、わたしたちのしていることはみんな意味がないのじゃないでしょうか。」
アルタクス(話す馬)の言動がいつもと違うことに、アトレーユはようやく気付きます。自分はアウリンのおかげで影響を被っていないだけで、馬の方は沼の力にとらわれてしまったのです。
アトレーユはアウリンを馬の首にかけようとしますが、馬は「それをなさってはなりません」と叱ります。アトレーユにできることは、沼に沈んでゆく友の願いを聞き届けるだけでした。
「どうぞ早くいっておしまいになってください。わたしの最期を見ていただきたくないのです」
と。
受講生のFちゃんは、「アルタクスにアウリンをかけながら、それに自分が乗ればよかったのに」と、二人とも助かる方法を考えてくれました。
この時のアトレーユの気持ちについて、受講生たちに質問しました。アルタクスはただの乗り物ではないことで意見が一致しました。
一人ぼっちになったアトレーユは、沼を歩き続けます。
そこで島ほどの大きさのある、太古の亀モーラに会います。
モーラはすでに長い時間を生きており、若いアトレーユと話がかみ合いません。アトレーユにとって重要だと思われることが、モーラにとってはすべて「どうでもいいこと」なのでした。けれどもアトレーユには使命があります。何とか機知を働かせて、話を聞き出します。
そこで、重要な情報がたくさん出てきました。それを受講生たちにまとめてもらいました。私なりのポイントは、以下の通りです。
・幼ごころの君はモーラのいるよりも前からずっと存在している。
・幼ごころの君には時間の概念がない。
・幼ごころの君の病の原因は、名前が古くなったこと。誰もがその名前をおぼえていないこと。
・幼ごころの君の病を治す方法は、彼女に新しい名前をつけること。
・しかし、新しい名前をつけることは、ファンタージエンのいかなる住人にもできない。
・南のお告げ所のウユララなら、それができる者のことを知っているかもしれない。
・南のお告げ所は、一万日あってもたどり着けないほど遠い。
一方、アトレーユの身にも危険が迫っています。
これと時を同じくして、まっ暗な荒れ野の闇から形をなして現れ出たあの影の生きものが、アトレーユのにおいをつきとめ、憂いの沼への道をたどりはじめた。この追跡をさまたげることは、ファンタージエン国のいかなるものにもできなかっただろう。
読者であるバスチアンは、アルタクスのために泣き、アトレーユのために恐怖します。この感情移入こそが、まさしく「はてしない物語」です。
次回の展開もまた、素晴らしく面白いです。
「Ⅳ 群衆者イグラムール」
映画『ネバーエンディングストーリー』では割愛されているシーンです。ぜひお楽しみに。