福西です。春学期もよろしくお願いいたします。
『西遊記(中)』(渡辺仙州翻案、偕成社)の第九章「猪八戒」を読みました。
三蔵一行はチベットの近くにある村に着きます。その村の金持ちが、妖魔に付きまとわれて困っているといいます。その悩みを解決するのが今回です。事情聴取→現地調査→解決、という怪奇探偵もののプロットをちょっと思わせます。
金持ちには三人娘がいて、その末娘に言い寄る相手が、豚の妖魔ということでした。豚の妖魔は月に一度「結婚しよう」と言い寄ってきます。娘が「いやです」と言うと、また来月まわし。それの繰り返し、ということでした。
悟空は得意の変化の術で娘になりかわり、妖魔を待ち受けます。そして逃げる猪八戒を追いかけ、観念させます。すると驚いたことに、猪八戒もまた観音菩薩から「ここを通りがかる三蔵のお供をせよ」という指示を受けていた、と吐露します。そして仲間になります。三蔵が八戒という法名を与えます。その名前の由来に「へえ」となりました。
音読していると、娘に化けた悟空と猪八戒とのやりとりが特に面白かったです。また、お礼のお金の使い途についても、悟空が男前で、爽やかな読後感がありました。
気付いたことは、悟空が他の個性と会話することで、だんだんと人間味を出してきた、ということです。村人とのやり取り、三蔵とのやり取り、そして猪八戒とのやり取り。以前は、粗暴さが目立つだけでしたが、それがうまい具合に位置づけられ、スパイスとなって、物語を愉快にしています。それを受け取る受講生たちの音読にも、脂がのってきたように感じます。
次回は「沙悟浄」です。お楽しみに。