浅野です。
先週は二次不等式の意味がわからないと言っていたAさんですが、今回は学校で新しく習い始めた三角比の意味がわからないとのことでした。
そりゃそうでしょう。いきなりサイン、コサイン、タンジェントなどと言われても意味がわかるはずがありません。問題集などでは最初は定義に当てはめるだけだから簡単ですが、意味がわからないのです。
直角三角形で、直角以外の1つの角度がわかれば辺の比(ひいては実際の辺の長さ)がわかり、辺の比がわかれば角度が一つに定まるので、設計や測量で使うと説明したら、一応は納得してくれました。
当面はこれでよいとしても、三角比を三角関数に拡張すると直角三角形の辺の比からは離れるので、そのときに意味を聞かれたらどう答えようかと悩みます。その来る日のために、答えをお持ちの方がいらっしゃいましたらコメントしていただけますとありがたいです。
>三角比
私も意味はわからないなりに、解き方ばかりしゃにむに覚えてやりくりした記憶があります。
>その来る日のために、答えをお持ちの方
私からもコメントをお願いいたしますm(..)m
福西です。
三角関数・三角比は、私もあまり良く分かっていないかもしれないのですが、今のところの理解では、
単位円が本質だと思います。
半径1の円(単位円)があるとすると、円上の点の座標は(x,y)=(sin(θ),cos(θ))となります。
生徒に、実際自分の手で三角形を描いて、そのことを確かめてもらうのがいいと思います。
ここで三角比の「三角」が登場します。つまり、
縦辺/斜辺=:sin(θ)…三角形上でsと描いて覚える、
横辺/斜辺=:cos(θ)…三角形上でcと描いて覚える、
と定義すると、斜辺の長さ=円の半径=1なので、
そのまま、縦辺=sin(θ)、横辺=cos(θ)
となります。(ここでこの三角形に対して三平方の定理を使うと、公式sin^2(θ)+cos^2(θ)=1も導出されます)
つまり、sin(θ)とは単位円(の円周上)にある点の「縦」の座標情報、cos(θ)は「横」の座標情報であるという具体的な意味を持つことになります。ここで角度θは、単位円周上のどの点をとるかということと対応します。
ここまでは、三角比の話になります。
さて、三角「関数」の方ですが、関数といえば、高校までの間は、「変数xとyの間にある1対1対応の関係をf(x)とよぶ」、すなわち「変数xの各値に対して、yの値が1つ決まる(2つ以上は無い)とき、y=f(x)とかくと、yはxの関数であると言う」と知っておけば十分だと思います。
また、そのことは幾何学的にした方が分かりやすいので、xy座標系で表される、(切れ目と結び目の無い)ニョロニョロ曲線1本(グラフ)のことが関数なのだ、というのが、最初に理解するところです。厳密に言えばもちろん関数が先にあって、グラフというのはあくまで1つの解釈に過ぎないのですが、複素関数(複素数の関数)の出てこない高校までは同一視していいように思います。
この考えでいくと、三角関数というのは、横軸(x軸)に角度θ、縦軸(y軸)にそのθに対する「三角比」をプロットしてできる「グラフ」だといえます。
たとえば、sin(θ)という三角関数であれば、(x,y)=(角度,三角比)=(θ,sin(θ))をプロットしていくと、できあがります(この「波形」がsin(θ)という「関数」にあたります)。このとき三角比とは、各プロットごとのyの値(1個)にすぎず、それが、関数と比との違いであると理解できます。「比は値、関数は全体」と言うと分かりやすいかもしれません。またここでのθは、三角比のときと違って、-∞から+∞までとれます。
このことは、点をプロットするときに円を描いてすると分かりやすいです。そういう意味で、円のほうが本質であるとして、三角関数のことを「円関数」と呼んではどうかという人もいるようです。
単位円を描き、その中心を原点にしてxy軸(座標)を引きます。そして点を単位円の円周上でぐるぐる回し、どれだけ回転したかの角度をx軸の値に、その点の高さ情報をy軸の値として、xy座標にプロットします。そうすると、それはsinカーブとなり、すなわちその波形をsin(θ)という関数とみなします。ちなみに円を回す作業がθが-∞から+∞までとれる理由になっています。
一方、cos(θ)も同様ですが、ちょっとややこしいことに、cos(θ)は単位円の点の高さ情報ではなく、横の値がcos(θ)であるため、y=cos(θ)のグラフをプロットするときには、y軸の方向に向かって波を描くという工夫が要ります。
三角関数には、三角形の2辺の取り方でほかにも、tan、cot、sec、cosec、cotという名のものが定義されています。
丁寧なコメントありがとうございます。
先回の授業時に、三角形における三角比から、単位円における三角比へと、定義の拡張をしました。ここで大きな発想の転換があるにもかかわらず、参考書ではさらっと進んでいたので、わかりにくかったようです。
こちらの定義のほうが本質だとすると、三角比は座標表記の一形態ということになるのですよね。通常のx, yの直交座標とは違って、角度を用いて点を指定するのがその特徴となるような。そういえば複素平面で、z=a+biと考えたり、z=r(cosθ, sinθ)と考えたりしたのを思い出しました。
三角関数のほうは難しいですね。その手順でグラフをかくと、きれいな波形が想像できるのですが、物理(音とか?)で使うのでしょうかね?θをいじって周期を操作したり、全体を何倍がして振幅を操作したりしつつ。
素人コメントですみません。わからないなりにコメントを参考にして考えてみました。
コメントをいただき、重ねてお礼申し上げます。
浅野先生、こんにちは。
>こちらの定義のほうが本質だとすると、三角比は座標表記の一形態ということになるのですよね。通常のx, yの直交座標とは違って、角度を用いて点を指定するのがその特徴となるような。
そうですね。極座標系というのがありましたね。(x,y)の代わりに、(r,θ)(半径と角度)を使っても、2次元空間の点の位置は、独立した情報が2つあればよいのでそれで表せる、と。私は、sin,cosには「単位円の座標の意味がある」と知っておくと、具体的で分かりやすいかなと思ったのですが、どうでしょうか…^^;
ただ三角比は、極座標系そのものに本質があるというよりは、もともとは円弧の長さを測るために出てきたようです。それで円から完全には離れられずに、三角「関数」になった時に再びその円を「グールグル」と回して思い出す必要が出てくるのだと思い、そういう意味で単位円が本質であるというつもりで書きました。
>そういえば複素平面で、z=a+biと考えたり、z=r(cosθ, sinθ)と考えたりしたのを思い出しました。
そうですね。まさにaがrcosθに、bがrsinθに対応しますね。複素数と三角比は非常に密接な関係にあると思います。それと複素数とsin,cosの関係で言えば、オイラーの公式:
z=r・exp(iθ)=r(cosθ+isinθ)
が一番魅力的ですが、ぜひ高校・大学で出会ってほしく、それまでのお楽しみですね。
物理では特に電磁波でsin,cosがよく出てきます。cosの方が電場(実軸)で、sinの方が磁場(虚軸)を表すとして、電磁波はその二つの直交関係にある波の合成(ずばり上のオイラーの公式が表す、複素数的なもの)だと理解されています。
また工学でもよく現象を複素数で表して、その実軸(cos)に時間、虚軸(sin)に周波数をとって議論することがよくあります。