浅野です。
このクラスも進度がバラバラなので全体を紹介することはせず、特に印象的だったことだけを紹介します。
Aさんは二次不等式の範囲について、「やり方はわかるけれど意味がわからない。」と不満そうに言いました。きちんと数学をしてくれていることがこの発言から窺えます。
テストなどではやり方をあてはめることが求められがちですが、そんなことは機械にもできます。数学のおもしろさは意味や考え方にあるのです。ですので、前述のセリフを聞いて、私は喜んで不等式とは何かというところから、二次関数のグラフを経て、二次不等式の解き方まで話しました。
やり方を暗記してそれを適用するだけなら数学は苦痛でしょうし、すぐに忘れてしまうでしょう。Aさんのように考えるとおもしろくなりますし、多少やり方や公式を忘れようが何とでもなります。Aさんにはその発想を大事にしてもらいたいです。
>不満
不満を聞いて、むしろ「喜んで」説明された浅野先生。きっと生徒は驚いたでしょう。そして、不満がバネとなり、結果的に、それが「納得と理解」、さらには「数学への興味」に昇華していく喜びを感じたことでしょう。
「二次」も「不等式」も両方興味深い概念ですね。というのも、「一次」の時にはない関数の「凸性」と、等式の時にはない「解のバラエティー」という新しいテーマの地平線が見えるようになってくるからです。
実社会では、たとえば一つの製品を生み出す際に、その製品に付随したさざままな性能に加えて、コスト、燃料、耐久性、使いやすさ、作りやすさ…etc.一度に複数の条件を満たすような物でないと実現しませんが、何とかその要求を満たす解を見つけたいときがあります。
それが経験的に不可能な場合、数学が強力な手段となってくるわけですが、そのときには、固定的な解を持つ等式よりも、範囲(柔軟さ)を持つ不等式の方が便利な主役になってきます。
つまり一つの見方として、不等式は単にイコールが化けただけではなくて、それによって「実社会のさまざまな要求に柔軟に対応できるようになったツール」だと思ってもいいかもしれません。不等式がはさまない領域は、とりもなおさず複数の条件の組み合わせが「実現不可能」ということを意味しています。
不等式が実用化されている例の一つに、たとえば線形計画法というのがありますね。またあれの二次バージョンに凸計画法というのがあって、今ではそれの親玉のLMIというのが使われています。(LはLineary;線形、MはMatrix;行列、IはInequarity;不等式の略です)。それは行列の二次不等式です。
また不等式の解が必然的に「領域」であることを知っておくと、後々のことですが、複素数の世界でいう関数(複素関数)が、いわゆる「縦軸と横軸のグラフ」で描けないことにあまりびっくりしないですむかもしれません。
あと不等式と並んで曲者なのが、絶対値ですね。あれも練習量が少ないがゆえに苦手と感じる人が多いのではないかと思われます。(絶対値も複素数とは密接に関係しているので、ぜひ学んでおいてほしいものです)
>「やり方はわかるけれど意味がわからない。」
という、芯から分かりたい気持ち、良く分かります^^
私の場合だと、代数的手法に終始する際に、よくこのことに悩まされました。
頭では理解しているけれど、心では納得できていないことに。
そんな時、しばらくしてから同じ問題の幾何学的なアプローチを学んだ時に、
ようやく「そうか」と実感することがありました。幾何学的イメージには可視化に
頼る分、おのずとその限界がありますが、それでも十分な助けになってくれる
ように感じます。
ax^2<b(一般にax^2+bx+c<0) という不等式は、a(x+α)(x-α)<0と
因数分解すると代数的な手法になりますが、xy座標のグラフ(幾何学)を使うと、
不等式の両辺は、
y=ax^2(y=ax^2+bx+c)
y=0…これも立派な関数
という二本の曲線(直線)に翻訳されます。
そして不等号の意味から、y=ax^2(y=ax^2+bx+c)がy=0に負ける「ようなxの範囲」が、
与式の解だというイメージが得られます。これは多分、直感的に理解しやすいと思われます。
ただここで気をつけなければいけないのは、不等式の時の解は、あくまでx軸上であって、
最初は二次方程式の曲線の一部をなぞったり、それで囲んだ面積を塗るといった誤解が
生じるかもしれないことです。
(等式の時は解が二本の曲線の交点であらわされるので、たまたま解が二次方程式の
グラフの方に解が乗っていましたが)
そのため、「yがこれこれであるようなx」という二段構えの書き方にも慣れていく必要があります。
>a(x+α)(x-α)<0
は見にくいですね。a(x+β)(x-β)<0 (βは解)のつもりでした。
>y=0…これも立派な関数
ax^2<bのときは、相棒はy=0ではなくy=bですね。すみません、間違いです^^;
ともあれ、x軸(やy=b)が一つの関数と見えたときには、多分、「わかった!」の
地平が開けてくるのではないかと思います。
今の不満が、ぜひいつか花咲いたときに喜べることを応援しています。