福西です。
『西遊記(上)』(渡辺仙州/翻案、偕成社)の8章1・2(p204~219)を読みました。
受講生から、「今日のところは一段と面白かった」との評判がありました。
前章では、白竜が三蔵の馬に姿を変えて、お伴に加わりました。そして三蔵、悟空、白竜の一行は旅を続けます。
一行は、金池(こんち)長老の寺院に宿を求めます。この長老が、慇懃ながらなんとも欲深でした。豪華な袈裟をしこたま集めていて、まだもっと欲しい。そこで、三蔵の秘密にしていた錦襴(きんらん)袈裟に目を付けます。
金池長老は無理やり錦襴袈裟を借り受けます。そして三蔵の宿泊日数を伸ばし伸ばしにしようと思いつきます。その間、ずっと袈裟を手元においておけると考えたからでした。それでも結局は我慢できず、一番短絡的な方法に飛びつきます。
しかし馬の姿の白竜がその悪事を盗み聞きし、悟空に伝えます。悟空はさっそく觔斗雲で天界にひとっ飛びし(このあたりの場面転換が西遊記ならではです)、昔戦ったことのある広目天から必要な道具を借りてきて対処します。
ばれているとはつゆ知らず、金池長老は、三蔵の寝室(寺院の一角)に火を放ちました。錦襴袈裟は燃えないらしく、あとで回収する算段でした。ところが悟空の道具が火を防ぎ、反対に悟空の息によって寺院の他の部分が全焼します。金池長老は、結局一つをコレクションに加えたいばかりに、それまでの全部を失ってしまいました。
朝、起きた三蔵は、茫然と部屋から焼野原を見渡します。そのお説教は、次週になります。
来週で、上巻を読了します。
残りの時間では、俳句をしました。
囀りやお前のすがたは声だけか Tomoya
来年もつくつく法師ちこくかな Tomoya
宿題の三分後にはアイスかな Tomoya
清流を群れでのぼる香魚かな Sizuku
初句。「囀り」が春の季語です。俳句では言い切りが大事で、T君の独白はすがすがしくてよいと思いました。中七・下五の調べは、どこかしら芥川龍之介の「青蛙おのれもペンキぬりたてか」を連想させます。この句での「や」は「=」の意味です。参考として、「や」は内容を強く切るので、もっと大胆に、まったく別の内容(≠)を持ってきてぶつけると、よりユニークな句が生まれると伝えました。二句目と三句目で「かな」にも挑戦しているのがいいなと思いました。
四句目。香魚(こうぎょ)は鮎のことで、夏の季語です。Sちゃんは「香魚という言い方を初めて知って、かっこいいと思った」そうです。また「『鮎かな』だと、もにょもにょするから」と。その通りですね。「香魚かな」には何にも代えがたい格調高さがあります。上五と下五はばっちりです。そこで私から一つ提案。中七が6文字で、あと1字使えます。それで、よりよい言いかえを探しました。すると、あっという間に時間が来てしまいました。芭蕉が「句調(ととの)はずんば舌頭に千転せよ」という言葉を残しています。まさにそれでした。
ところで、Sちゃんが『全国佛教大学小学生俳句大賞』で佳作を取ったとの報告がありました。
ブランコと風と競走5時5分 Sizuku
また、『西洋の児童文学を読む』クラスのK君も、同じく佳作を取ったとのことでした。
カイロもむ旅の途中の無人駅 Kai
お二人とも、おめでとうございます!