「山びこ通信」2018年度号より下記の記事を転載致します。
『イタリア語講読』
担当 柱本元彦
受講生は三名から二名になりました。Nさん、お仕事の後ほぼ毎週のように七年間、ほんとうに時の経つのは信じがたいものがあります。講師もいろいろなことを教わりました。ありがとうございます。さて今期、カルロ・レーヴィの次に読みはじめたのは、ステファノ・ベンニです。ベンニは、四十年ほど前の処女作以来、本を出せばかならずベストセラーに入ります。ベストセラー作家だけれども実質のある作家と言えるでしょう。短編も多く書いているのですが長編のほうが面白いと思います。なので読んではいなかったのですが、一昨年に出版された最新作の小説『プレンディルーナ』を選びました。昔に比べるとパワーは落ちていますが、相変わらずのベンニ節、二十年以上前に邦訳された『聖女チェレステ団の悪童』と同じような感触の、いつまでも読みつづけたい(残り少なくなるページが恨めしい)小説です。文章は難しくないとも難しいとも言えます。翻訳しがたいところが難関です。パロディとユーモアと風刺を利かせた隠語や造語や語呂合わせが散りばめられ、過去と現在、現実の世界とお伽噺の世界が交差します。想像力をフル回転させて読む必要があるでしょう。ここを乗り越えることが目標ですが、分からないところは飛ばし読みしても面白いテクストだと思います。