「山びこ通信」2018年度号より下記の記事を転載致します。
『ギリシャ語初級、中級A・B、上級A・B
ラテン語初級、中級A・B、上級』
担当 広川直幸
今年度も多くの授業を開講した。年度末までまだ一ヶ月以上あるが、現在の状況を具体的に記すと、ギリシャ語初級は教科書(Thrasymachus)を学び終え、中級への橋渡しになるものとしてルキアノスの『本当の話』を読んでいる。ギリシャ語中級Aはヘーロドトスを読んでいる。ヘーロドトスを全部読むのは大変なので、抜粋(A. L. Barbour, Selections from Herodotus)をテキストにしている。ギリシャ語中級Bはエウリーピデースの『メーデイア』を一回に40行程度のペースで読んでいる。ギリシャ語上級Aはアイスキュロスの『救いを求める女たち』を読んでいる。山の学校で読むアイスキュロスは4作品目である。ギリシャ語上級Bはヘーシオドスの『テオゴニアー』を読んでいる。
ラテン語初級はHans H. Ørbergの Lingua Latina I: Familia Romanaでラテン語の初歩を学んでいるが、遅々として進まないのでExercitia(練習問題集)をやめることにした。2年以内(次の春学期末まで)に終わらせる予定である。ラテン語中級Aはリーウィウスの『ローマ史』を読んでいる。ラテン語中級Bはオウィディウスの『変身物語』を読んでいる。今は作文はせずに、一回に40行程度のペースで講読を進めている。ラテン語上級はプラウトゥスの『アンピトゥルオー』を読んでいる。
それぞれの授業のテキストや進度については、学期末から学期初めの期間にインターネット上のホームページの情報を更新しているので、そちらを参照していただきたい。
来学期に新しく開講することが決まっている授業は、今のところ「ギリシャ語初級」のみである。曜日と時間は今までと同じく月曜日の18:40から20:00まで、テキストもこれまで同様Thrasymachusを使用する。一度開講すると次の新規開講は一年半から二年後になるので興味があるならこの機会を逃さないようにしてもらいたい。そのほかの新規開講等の動きについてはまだ決定していないので、決まり次第ホームページ上に発表する。
さて、よい機会なので最近授業をしながら気になっていることについてアドバイスをしようと思う。まずは一般的な発音について。語学で学ぶべきことは「語彙と文法」の二つである。そして、それ以前に大切なのが「発音」である。これは古典語の場合には普通は書かれている文字を音読する能力のことを指す。当たり前なことだが、これができないと語彙も文法も学べない。同じ語を読んでいるのに、読むたびに母音の長短やアクセントを勝手に変えたり、少し長い語になると綴りを飛ばして読んだりするようでは、正しい形が記憶に定着することはない。発音をないがしろにして、日本語訳や文法的説明ばかりを求める人は、このことをよく考えて、きちんと音読する習慣を身につけるよう努力してもらいたい。
次は韻文の発音についてである。韻文を読んでいると、韻律単位を気にしすぎて、発音がおかしくなる人が多い。日本語で起きる現象では、「ぎなた読み」や、アニメ巨人の星の歌に「コンダラー」が現れると思うことに、発生の原因は真逆であるが、結果はある意味で似ている。「ぎなた読み」や「コンダラー」はリズムを理解し損なうことから来る、誤った理解=発音の例(「弁慶が、なぎなたを」→「弁慶がな、ぎなたを」。「思い込んだら」→「重いコンダラー」両方とももとは七五調)であるが、ギリシャ語やラテン語の韻文を読む場合には、韻律単位を重視しすぎるあまり理解不能な発音をしてしまうという間違いが起きる。韻文は散文以上に音を味わうという要素が強いものであるから、韻律だけを理解するための音読ではなく、韻律を感じながら何を読んでいるのか理解できる発音ができるように指導をしようと思っている。