今回で『荘子』逍遙遊篇を読み終えました。
今回、読んだ寓話のなかにヤマネコが登場しました。このことに関してすこしお話しするつもりだったのですが、うっかり忘れておりましたので、ここで簡単にご紹介します。
「猫」という字は、犬などの動物を意味するけものへん(犭)に、「ビョウ」という音を表す「苗」と書きます。このような漢字は、意味を表す部品(意符)と音を表す部品(音符)を合わせた文字なので、「形声文字」と呼ばれます。
ところで、台湾には「猫」がいない、ということはご存じでしょうか。正確には、台湾では「猫」という字を使わない、と言うべきですが、中国語では「いない」も「ない」も同じように「没有」と表現するので、「台湾没有猫」という冗談を言うことができるのです。
では、台湾の人たちはネコのことをどのように書き表すのでしょうか。答えは「貓」です。「貓」と「猫」とは異体字の関係にあって、両者は同じ音、同じ意味を表しています。台湾では画数の多い「繁体字」を使い、大陸では画数を省略した「簡体字」を使っていることはご存じの方も多いかも知れません。では、「貓」は繁体字で「猫」は簡体字なのかというと、そういうわけでもありません。
簡体字は繁体字をもとに画数を少なくして作ったものが多いのですが、古くから使われていた略字、異体字のなかで画数のより少ないものをそのまま使っている場合もあります。「貓」と「猫」とは同時期に並んで通用していましたが、近代になってどちらの字体を正式に定めた際に、大陸では「猫」を正字としたのです(1955年公布、《第一批異体字整理表》)。
では、「貓」という字はどのように作られたのでしょうか。次回につづきます。
木村