西洋古典を読む(2019/2/6)

福西です。

『アエネーイス』(日本語訳)の第1巻76行~130行を読みました。

ユーノーの命に従い、風の神アエオルスが海上に嵐を起こします。(風の国の描写が興味深いのですが、ここでは割愛します)。航路のトロイア人一行は、たちまち身の危険にさらされます。

ここで、アエネーアス本人がやっと登場します(92行目)。しかしその初台詞が、「こんなところ(海)で死ぬぐらいなら、トロイアで死んだ方がましだった」という主旨の嘆きでした。

「三倍も四倍も幸せであった者たちよ(o terque quaterque beati)」と、同胞の過去の戦死者たちに向けて発せられます。なぜ私はトロイアでディオメーデースに討たれて死ななかったのか、とも。

ディオメーデースとは、トロイア戦争でのギリシャ側の英雄です。というわけで、『イリアス』の第5歌(アエネーアスと対峙する場面)を参照しました。

さて、アエネーアスの言葉をかき消すかのように、海はますます荒れ、船のいくつかは破壊されます。

船が波のてっぺんにあるかと思えば、次の瞬間には、海の底をのぞき込むといった、ジェットコースターのような描写があります。まるで現代の小説を読んでいるような印象を受けました。

次回は131行~179行を読む予定です。海の神ネプトゥーヌスが海の異変に気づき、アエオルスを叱責するところからです。

 

P.S.

A君が『ビザンツ帝国の最期』(ジョナサン・ハリス、井上浩一訳、白水社)がすごく面白い、という話をしてくれました。A君から聞いたところでは、ビザンツは、西欧諸国とオスマンに取り入って命脈を保つ、その外交が上手だったとのことです。

「ビザンツの外交の切り札は、『そっちが要求を呼んでくれなかったら、あっちに滅ぼされてやるぞ』という脅しです。滅ぼしてやるぞ、ではなくて。『反対側の勢力(西欧にとってならオスマン、オスマンにとってなら西欧)に吸収されてやる、というわけです。ビザンツは貨幣の純度が高いという取柄と、通商で得た経済力があります。それを反対勢力に売り渡すことを武器にして、交渉相手に要求をのませた」

という話でした。

A君の話しぶりは、とてもスリリングでした。私は、そのビザンツの捨て身外交に、先週の「歎願者」のことを連想していました。