2018/11/2
前回始まった、「ひみつ基地づくり」のつづきです。
出発前、教室でひとつだけお話をしました。
山野忠彦さんという、日本で初めて自らを「樹医」と名乗り、日本各地の悲鳴を上げている樹木・老木を診て回った方のエピソードです。
とある神社から大きな楠(クス)が弱っているので、診て欲しいと依頼があり、傷んだ根に若い根を接いだり、栄養剤を注射したりして、無事に治療を施しました。
あとになって、神社の方が「何ともなかったですか?」と妙なことを山野さんに尋ねます。
実は、昭和初期に路面電車を走らせる計画に伴い、道路の拡張工事がありました。その際、はみだした楠を切ろうとした人たちが、怪我をしたり亡くなったりすることが立て続けに起こり、とうとう計画を断念せざるを得なくなったそうです。依頼、「平清盛の祟りだ」と噂され、恐れられてきました。
京都市水族館にほど近い「若一神社」の御神木の話です。
山野さんは、自分が平気だったのは、必ず木と対話してから取り掛かるからだろう、と言います。
「痛いだろうけどちょっとの辛抱だからな、絶対に助けてやるからな」と。
木の方も、自分を傷つけるだけの人か、大事に想ってくれている人なのかを分かるというのです。
なぜ上記の話をしたかというと、前回の取り組みで、のこぎりの使い方、心得に不十分なところを感じたからです。
「じゃまだから切る」と簡単に発言したり、倒れている木だからといって、むやみに歯をあててみたりする場面がありました。彼らに悪気が無いだけに、木に向かい合う心、のこぎりを手にする心得について考えて欲しかったのです。
「ここは僕の部屋だから入っちゃだめ」なんていう発言があったときも同様です。
それならば、たったひとりのひみつ基地を作るべきです。
「基地づくり」がワクワクして楽しい取り組みであることは言うまでもありませんが、それ以上に、森に対する敬意や、仲間を思いやる心を育むことの出来るチャンスだ考えています。
2018/11/16
この日は一名だけだったため、基地づくりは休止し、T君と対話をしているうちに「箱庭をつくってみたい」ということになりました。
森の中や園庭の隅にある、苔や木の芽、落ち葉などに目を配ります。
落ち葉の中に、とても綺麗な赤と黄色のグラデーションを持ち、触るとすごくふわふわして気持ちいいものがあり、「すっごいふわふわだね!」と一緒になって喜びました。
ちょうど園庭でT先生が落ち葉掃きをされていたのですが、そのちりとりに溜まった赤や橙の落ち葉の山を見て、
「あ、宝の山がある・・・」
と近寄り、その中からも綺麗な落ち葉や、木から剥げ落ちたのであろう苔、シダの芽のついた土の塊などを集めていました。T先生も微笑んで見守って下さいました。
教室に戻って、トレーに土を敷き詰め、苔を敷き詰めて、落ち葉で縁取りをしたら、あっというまに素敵な「庭」ができました。「庭」の隅っこまで丁寧に処理をしていたのが印象的でした。
また機会があればいつかみんなでしてみたいですね!
(担当:梁川健哲)