福西です。
次に読むテキストを選びました。冬休み前に挙げていた、以下の中(日本語訳のもの)から決めました。
哲学系
1)セネカ『幸福な人生について』
2)セネカ『倫理書簡集』
3)プラトン『ソクラテスの弁明』
4)プラトン『国家』
悲劇(神話)系
5)アイスキュロス『テバイを攻める七人の将軍』
6)ソポクレス『オイディプス王』
教訓詩(神話)系
7)ヘシオドス『仕事と日』
叙事詩(歴史)系
8)ウェルギリウス『アエネイス』
年が明け、1)と8)が最終候補に上がりました。
先に読んだ『人生の短さについて』は、ざっくり言うと、欲望や運の女神に「心」を占領される(時間をつぎ込む)ことが多忙であり、その時間の無駄遣いが人生を短くする、という内容でした。
では、ラッキーではなくて、ハッピー(の女神)はどういうものなのか、という展開が、1)セネカ『幸福な人生について』です。ちなみに幸福は、ラテン語のベアータ(beata)の訳です。
幸福な人生には指導者(規範)が必要だ、とセネカは書き始めます。それも、人間にそれを求めるのではなくて。セネカの場合は、それを「自然」(natura)に求めます。そこにストア派の考えがうかがえます。また、後半はセネカが賢者の(清貧な)暮らしを人には勧めておきながら、自身は(賢者らしからぬ)金持ちの暮らしをしているのはなぜか、ということへの弁明(言い訳?)になっています。もちろん、面白い内容です。
一方、セネカが「心の無視」を決め込もうとした、運フォルトゥーナ(fortuna)とはちがって、「運命」と訳せるラテン語があります。それが、ファートゥム(fatum)です。
「運命によって(fato)」イタリアの岸辺にたどり着いた一人の英雄、アエネアス、の物語。それが、8)『アエネイス』です。
上の二作品でしばらく揺れていたのですが、A君が「『アエネイス』にします」と決めてくれたので、次回(か次々回)からそれを読み始めます。
A君は、歴史(特にポーランド史)と、『ロランの歌』や『ニーベルンクの歌』といった叙事詩が好きということです。
その日は、冬休みにA君が読んだ『ベオウルフ』と、私が読んだ『アーサー王と円卓の騎士の物語』とで交互に意見を交わし合い、盛り上がりました。
その時、A君が教えてくれました。
「『ベオウルフ』と『アーサー王』では、誉め言葉が違うんです。『ベオウルフ』では「全員が賛成した」と言うと、それは最大の誉め言葉です。でも『アーサー王』ではそれが見られなくて、最終決議であっても、たいてい誰かが反対したまま残り、もやもやっとした感じになるんです」と。
そのような、貴重な発見を教えてくれました。
次週もよろしくお願いいたします。
『アエネーイス』。王道ですね。楽しみです。
セネカは『アエネーイス』を愛読していた一人です。『倫理書簡集』の随所に引用が見られます。
西洋古典文学を読む、このクラスの存在は貴重だと思います。
こういうのを読みたかった、そういう新たな参加者も得て、どんどん賑やかになればと願っています。
山下先生、福西です。
コメントとエールをありがとうございます。
熱心な中学生の生徒と『アエネーイス』を
読むことができる意義を、
私自身もかみしめながら、1回1回に取り組む所存です。