2018/09/07(秋学期初回)の記録
小雨がちょうど止んで、空は曇っていました。
そのような天気なのでみんなあまり外には行きたがりませんでしたが、私がある虫を使った実験のことを紹介すると、興味を持ってくれたようで、虫を探してみようということで、外へ出掛けました。
その実験というのは、ダンゴムシに迷路を歩かせるというものです。
園庭へ出ると、ダンゴムシより先に、大きな水たまり、そしてその脇を歩く大きな蟻が目に止まりました。
「蟻って泳げるかな?」「バッタのほうが、泳ぐの得意そう」そんな言葉が子供たちの間でかわされ始めました。
確かに、何かの拍子で水たまりに落ちてしまうということは起こり得ることです。そのとき、蟻はどうするでしょうか?さっそく実験が始まりました。
最初の2匹、思った以上にすいすいと岸辺に辿り着く蟻を、みんなで感心しながら見守りました。
よく見ると、長い後ろ足だけまっすぐに伸ばして揃え、残りの4本足を掻くようにしています。これがアリの泳ぎのスタイルなのでしょうか?
また、別のアリで試した時は、体が随分と水面下に潜ってしまい、かなりもがいていました。つい水をかき混ぜたり砂をかけたりしたがる子どもたちの動作を制止して、そっと見守ってみようと声をかけました。
水の中から微かに突き出た草を頼りに何とか体勢を立て直そうともがく蟻を、
実況中継をするように応援していると、
「先生は蟻になっているね」とToma君が言いました。
それは、その通りだったと思います。
最初「もう絶対あかんわ」と思われていた蟻は、溺れかけながらも最後はとうとう体勢を立てなおして泳ぎ、岸辺へと辿り着きました。
そのあと、殻の透き通った小さいカタツムリや、ダンゴムシ、ヤスデなどを見つけたところで教室へ戻りました。
ダンゴムシの中に、脱皮の途中のものがいました!私も初めて見ましたが、お尻の方を脱いであり、頭の方を被ったままでした。
ダンゴムシが先に下半身を脱皮するのは、敵からの危険に晒される脱皮中、せめて先に下半身を固めておいて、逃げる体勢をとれるようにするためではないかと考えられています(※1)。
Yoshitane君の推論は「頭は大事だから、最後まで殻を残しておくのでは」というものでしたが、こちらも説得力があります。
ダンゴムシに迷路を歩かせる実験(※2)は、3回ほどできました。スタートが一箇所で、T字路が3回現れる(ゴールが8つある)迷路です。
ダンゴムシは、予想される結果通り、「右→左→右」のような交互に折れ曲がる進み方をしてくれました!
ヤスデをスタート地点に置いてみると、最初のT字路で迷わずにまっすぐと壁を乗り越えて直進していき、笑いが起こりました。これも立派な実験結果です。
最後に、注目すべき面白い発見がありました。
捕虫ケースから机の上にあけたヤスデが、2匹ぴったりと折り重なったまま歩いていました!上のヤスデは下のヤスデにしがみついたままじっとしているだけで、下のヤスデがそれを一生懸命に運んでいます。
その姿はとても微笑ましいものでした。
それで思い出される、別のダンゴムシの実験(※3)についても紹介しました。
力も大きさも同じくらいのダンゴムシをお尻同志、糸で繋いで於いておくと、最初は綱引き状態になり、どちらも自由が利かないのですが、そのうち片方がもう片方の背中に乗っかって、おんぶされるように運ばれていく、という行動が見られる場合があるそうです。
このように、小さな虫たちの行動について調べることは、思いがけない発見があり、楽しいものです。
今日だけでも、
・いろいろな虫の「泳ぎ(水に落ちてしまった時の対処)」はどうか
・迷路の先に、餌のあるゴール、何もないゴールを置いた実験
・二つのコースを別々の虫を歩かせて競争させる
・単位時間に何センチ進めるか(或いは一回の跳躍で何センチ跳べるか)を色々な虫で試す
など、対話を通して子どもたちの中から色々なアイデアが生まれてきました。
そのようにして虫たちの行動をよりつぶさに観察し、知ることで、「虫の心」を知るところまで、至るでしょうか?
そもそも「心」とは何でしょうか?
「心があるから(虫も)生きられる」というYoshitane君の意見が、まさに心に残りました。
(※1,2,3 『ダンゴムシに心はあるのか』森山徹 著, PHPサイエンス・ワールド新書 を参考にしました)
(担当:梁川健哲)