山びこ通信(2008.6)に掲載された講師からのメッセージ:
『ギリシア語入門』 (担当:広川直幸)
今学期から始まりました古典ギリシア語入門コース。受講者数二名。水谷智洋『古典ギリシア語初歩』を教科書に、一回一課のゆっくりとしたペースで進んでいます。一年36回の授業で36課の教科書を終える予定です。
さて、ギリシア、ギリシアと言いますものの、ギリシアとはポルトガル語経由で日本語に輸入されたラテン語で、ギリシア人がギリシアを呼ぶ呼び名とは異なります。では、その呼び名とは何か。それはすなわちヘッラス(現代ギリシア語ではエラーザ)です。実はこのヘッラスも日本語に輸入されています。希臘というのがそれです。この希臘、日本語では専ら「ギリシア」と読み習わされていますが、もとの中国語では「シーラー」と発音されます。そう、この希臘はヘッラスの音写なのです。すなわち、希臘と書いてギリシアと読むのは、二つの異なる伝統が極東の地で合流したということなのです。
さてさて、実際にギリシア語を学び始めると、まず見慣れない文字に戸惑うことになります。ギリシア文字は文字によって様々な書き方があり、こればかりは印刷された文字を見ていても分からないことなので、実際に行われている書き方を説明し、好みの書き方で書けばよしとしました。
つぎの難関はアクセントです。古典ギリシア語のアクセントは日本語と同じ高低アクセントです。ですから、古典ギリシア語は、一度慣れてしまえば、日本人にとって発音しやすい言語なのですが、アクセントの位置を定める規則が少し複雑です。これに関しては、いくら抽象的な規則の説明を読んでも駄目なので、間違うたびに、手本を示して直してもらうという方針をとっています。なので現在試行錯誤の真っ直中にいます。
さて、毎回授業でどのようなことをしているのかといいますと、練習問題の読解と語形変化の口頭練習、それから次に進む課の簡単な説明をしています。特に語形変化の練習はしつこくしつこく行っています。語学の初歩で学ぶべきことは語彙と文法の二つで、古典ギリシア語の初歩の文法とは要するに語形変化のことだからです。
まだ産声を上げたばかりのこの授業、目指すところはヨーロッパ精神に計り知れない影響を与えてきた古代ギリシア語文献の森に足を踏み入れることです。途中からの参加は難しいかも知れませんが、少しでも興味がおありならば、何なりとお尋ね下さい。
(広川直幸)