「ラテン語初級文法」のクラス便り(2010.6)

春学期のクラスだよりを「山びこ通信」2010.6月号より転載します。

『ラテン語初級文法』クラスでは、従来と同じく、一学期三ヶ月の内にラテン語文法の基礎を修得するプログラムで授業を行っております。教科書として『ラテン語初歩改訂版』(岩波書店)を用い、各課に挙げられた文法事項を確認した後、羅文和訳問題を解いていただく流れになっております。その日扱う文法事項の難易度にもよりますが、毎回およそ4 課ずつ進み、補足的に他の文法書や文学作品からの引用なども教材として用いています。

和文羅訳問題に関しては、時間の関係から授業内では行っておりません。受講生の方々の自由選択とさせていただき、当日進む範囲の試訳をお渡しして、後日授業後にまとめてご質問にお答えする形をとっております。

今学期の受講生はお一方です。結果として練習問題をすべてご自分お一人で担当されることになり、ご負担が大きくなってしまうため、毎回4 課というペースを維持できるか危惧しておりましたが、今のところ順調に進んでいます。

ラテン語学習の上での最初の関門ともいうべき第三変化の名詞、形容詞も無事乗り越えました。和訳も語順の微妙な変化を踏まえた上で訳されている様に窺えます。今までこのクラスを受講された方々が一様に間違われた問題を見事正解されるという快挙もありました。

この先待ち構えている接続法などの項目も、この調子で克服していただければと願っております。ラテン語を学ぶ動機は人それぞれでしょうが、その一つとして、ギリシアという偉大な先人の成し遂げた遺産を継承、吸収し、独自の文化を作り上げ、いつしか自らも古典の地位を占めるに至ったという歴史的経緯が挙げられるのではないでしょうか。

その過程で窺える「学びの姿勢」は、何事であれ真摯に学ぼうとする者にとってかけがえのない模範であり、また伴侶たりうるものと信じています。ラテン語の持つ様々な意義を再確認しつつ、受講生の方と共に毎週「ゆっくり急げ」の歩みを続けております。

(山下大吾)