今年度より漢文入門を担当させていただくことになりました、京都大学大学院文学研究科の陳佑真と申します。兵庫県に生まれ育ち、渡哲也さんや淡口憲治選手の後輩として三田学園を卒業して京都へ出てまいりました。唐代から南宋の学問への変遷過程に興味を持っており、その過渡期に当たる中国北宋時代の四書五経への注釈に込められた思想を探るというテーマで研究を進めております。
私自身勉強中の身であり、本来「先生」になる立場ではありません。しかし、殷の時代の賢者、傅説(ふえつ)は、「惟れ教は学の半なり」(『書経』、説命下篇)、教えるということもまた学ぶことなのだ、と言いました。ですので、私も精いっぱい皆様の学習のお手伝いができるよう努力いたします。
さて、四月の教室について振り返りたいと思います。
第一回の講座では小川環樹・西田太一郎両先生による『漢文入門』を教材としましたが、より初歩的な内容から学習したい、というご要望を受け、第二回では主に助字を中心とするプリントを作成し、それに基づいて授業を行いました。
第二回講座では、「以」「所」「如」「乃」といった漢文中頻出の助字を対象とし、特に類似する助字との区別などに注目してできるだけ詳細に、それぞれの文字がもつイメージをお伝えいたしました。また、この際、加地伸行先生のご著書『漢文法基礎』(講談社学術文庫)をおすすめいたしました。ごく一部に不明瞭な点があることを除いて、類書のうち最も網羅的で解説も優れており、名著と呼ぶべきものと考えております。
また、本日第三回の講座では、「以……(動詞)」構文の復習、「蓋」という字のもつイメージ及び対句の読解を主たる内容としてプリントを作成し、講座を進行いたしました。対句の面では主に王勃の滕王閣序、そして李世民の三蔵聖経序(褚遂良の書によって有名なものです)を題材として学習を進め、対句の美についてお話しし、興味をもっていただけたことを大変嬉しく思っております。
これからも、受講者様のニーズに沿った教材作成・授業進行を心がけていきたいと思っております。非受講生でご覧になっておられる方も、興味があれば山の学校へご連絡いただければと存じます。